連載コーナー
本音のエッセイ

2024年5月掲載

駄菓子屋ってまだあるの?

土橋 真さん/駄菓子屋研究家

土橋 真さん/駄菓子屋研究家
浅草生まれ浅草育ち。町の中で静かに佇む駄菓子屋を、耳目を頼りに足で探すスタイルで巡り続け、ついたあだ名が【駄菓子屋ハンター】。駄菓子屋文化を日本遺産にすべく、多岐にわたり活動中の45歳、2児の父。

突然ですが問題です。

・人気美容院の待合室に
・大学生たちが学業の一環で
・田舎と都会2拠点生活家族が移動開催の
・高齢者福祉施設内で利用者たちが
・学童施設で子どもたちが主体となって
・定年退職されたご夫婦が自宅を改装して
・亡き祖母の想いを継ぎ、お孫さんが半年の時を経て

 

上記の文章のあとには同じ言葉が入りますが、一体なんでしょうか?

 

正解は【駄菓子屋を開業した!】です。

 

しかもこの事例は、平成後期〜令和に入ってからの出来事。つまり最近の話です。

 

え〜?? 駄菓子屋って、まだあるの〜??

    

読者の皆様、そう思われたんじゃないですか?(笑)。はい。まだあるんです!

 

信じられますか?それどころか、最近は少しずつその数を増やしているんですよ。

 

バブル崩壊から続く「失われた30年」。少子化・後継者不足・店主の高齢化、そして子どもたちの遊びの多様化などもあり、駄菓子屋業界は斜陽の一途をたどりました。年季の入った日本家屋の1階部分。ガチャガチャと白いアイスボックスが、店内にはおばあちゃんがニコニコ笑顔で鎮座しているような。いわゆる昭和時代の古き良き駄菓子屋はかなり少なくなってしまい、今では国宝級の貴重な存在になってしまっていますが…。

 

東日本大震災の頃に、再び芽生えた地域の【絆】。コロナ禍で、自由に遊べなくなった子どもたちへの憐憫(れんぴん)の情。複合的な事由が絡まり、各地で学校⇔家庭以外の居場所【サードプレイス】として駄菓子屋の存在意義が注目され、開業する人たちが増えてきているのです。

 

駄菓子屋単体では利益確保など難しい問題があるので、本業との組み合わせや時間限定など、やり方はさまざま。しかし、そうしたニューカマーたちの多くの胸にあるのは、かつて子ども時代に通った駄菓子屋の思い出・温もり。良きこと・悪しきこと含め、社会生活の基本を図らずも学ばせてくれた駄菓子屋の姿そのものだったのです。

 

今はネット・SNSをやっている駄菓子屋も多いので、興味がある方は検索して、近くの店に足を運んでみてはいかがでしょう?駄菓子屋は子どもたちの世界です。しかし、皆様だって【かつては子どもたち】でしたよね?だから大丈夫(笑)。

 

余談ですが、うまい棒は1979年生まれ【御年44歳】。ベビースターは1959年生まれ【御年64歳】。ボンタンアメは1924年生まれ【御年100歳】でございます。

 

時には駄菓子屋で駄菓子に囲まれ、ノスタルジーにひたってみてください。その際、長きにわたり変わらぬ味と価格帯でいることに、ほんの少しでもリスペクトしていただけたら、駄菓子たちも喜ぶと思います!

(無断転載禁ず)

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