地面出し競争World Cup in肘折~豪雪を逆手にとって地域を活性化~
- 八鍬 博幸さん/NPO法人Oh!蔵SPORT事務局
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NPO法人 Oh!蔵SPORT
山形県最上郡大蔵村赤松689-1(生涯学習センターまつぼっくり内)
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http://ohkurasport.jp
はじめに
Oh!蔵SPORTの代表的イベントといえば誰しも地面出し競争と答えます。
地面出し競争は、日本有数の豪雪地として知られている山形県肘折地区において、平成21年3月に閉校した旧肘折小中学校の雪上運動会の花形種目として、28年間継続されてきた伝統ある競技です。
スコップ、スノーダンプを駆使し、チームワークをもって「いかに速く雪を掘って地面を出すか」を競います。単純にしてアホらしい。が、4mのフィールド内で大きく掘り進めるとロスが生じ、小さく掘り進めると次第に窮屈になり身動きが取れなくなってしまうなど、積雪量に合わせて掘るという奥が深い競技です。
チーム構成は1チーム最大6名ですが、雪を掘り進める人、掘った雪を片付ける人、各々役割を担うチームワークも重要なポイントとなります。
地面出し競争で、利雪・親雪・和(なごみ)雪
学校統合により、地面出し競争は廃止かと思われたころ、「学校がなくなっても、地面出し競争は残せないものか」と地区住民の要請がOh!蔵SPORTに寄せられてきました。特に当時、肘折青年団長の早坂氏からの「青年団の力を結集し、成功裏に収めますからやりましょう」という一言が開催を決定づけました。
住民の要請に応えるため、新事業にチャレンジしようと思い立ち、Oh!蔵SPORT運営委員会、肘折地区体育委員会で協議した結果「地面出し競争World Cup in 肘折」と銘打って、肘折らしく厳寒の2月第4日曜日に開催されています。
白熱の予選ソリンピック
地面出し競争の前哨戦が「ソリンピック」です。ソリンピックは、より長くソリを滑らせることができたチームから雪を掘るフィールドを選択することができます。
スタートを横並び一斉に走り出す地面出し競争において、場所決めは非常に重要です。早く掘るだけではなく、早くフィールドにたどり着く、早く掘り出した土(春)を審判長へ届けることに大きく関わってきます。
本選開始
「3、2、1、スタート」という掛け声と同時に240名もの出場者が一斉に走り出します。ドドドという地響きのような音が聞こえるほどの迫力です。膝上に達するほどの雪をかき分け自身のフィールドへたどり着くと、全員が一心不乱にスコップやスノーダンプを雪に差し込みます。やみくもに掘れば良いというものではなく、効率良く階段状に雪をかき出していく必要があります。まさに知力、体力、チームワークの勝負です。
スポーツイベントによる豊かな地域社会
地面出し競争は、肘折地区独自のルーラルスポーツといえます。豪雪を掘り起こし、雪深い肘折に一足先に春を呼ぶ地面出し競争。遠く県外に居を構え暮らしている肘折出身者も参加し、小中学校時代に参加した地面出し競争への郷愁を垣間見ることができます。
何よりも、郷愁をかき立てられた肘折出身者が毎年参加するために帰省するだけではなく、大会や肘折に関わる人々を観戦者、参加者そして支援者として迎え入れています。地面出し競争は、「肘折人」のアイデンティティーを象徴するものにもなっています。豪雪を逆手にとり「見ても・やっても・支えても」楽しい地面出し競争をWorld Cupの名が示すとおり、全国各地で開催され、転戦できればこの上ない喜びです。
地面出し競争が今後肘折の地にどのような彩りを添えるか、展開するかは私たち関係者の手腕にかかっていると思われます。お名前は忘れましたが「生活の楽しさが広がれば地域への愛着と誇りが生まれる、すると中央志向から離陸し、コミュニティー・アイデンティティーが醸成される。そうすれば、地域づくりと活性化の重要なコアができます」と、言われた言葉を思い出します。
厳寒のはずが、なぜか芯から熱くなる!
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