神戸市郊外の小さなファッションブランド 世界遺産・清水寺の舞台へ
- 佐藤 基子 さん/AURATiERデザイナー
- 1974年京都府生まれ。アパレルバイヤー、スタイリストを経て、2016年デザイナーへと転身。オリジナルブランドAURATiERは、女性経営者たちから熱狂的な支持を得る。流水紋作家 重富豪氏より流水紋を服にすることを託され、19年完成。23年にマレーシア、パリでのコレクションに参加。25年5月に京都・清水寺で奉納舞台「魂のリトリート 流水紋と生きる」を開催予定。
https://faire-parci-parla.com/
ファッションを手段に「自分を生きる」を伝え続ける
あなたは今、自分の魂が喜ぶ生き方をしていますか?誰かの人生ではなく、自分を生きている―そう胸を張って言えますか?
ファッションデザイナーである私がそう問いかけることを、不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。私はある出来事をきっかけに「自分を生きる」を体感し、その大切さを一人でも多くの人に伝えたいと思うようになったのです。
デザイナーになるまで
祖母の代からオーダーメイド職人の家系に生まれた私は、幼い頃から服が大好きで、自然とアパレルの道に進みました。バイヤーとして世界中を飛び回る生活をしていましたが、出産後、育児と仕事の両立が難しく、それまでの仕事をすべて手放すことに。その後、社会とつながりたいと出店したフリーマーケットをきっかけに、2006年自宅サロンをオープン。パーソナルスタイリストとして活動するようになりました。
2016年、念願の自身のブランドAURATiERを立ち上げ。その服を身にまとったお客さまからは、「夢がどんどんかなうようになった」という声が聞かれるようになり、口コミで瞬く間に広がっていきました。
流水紋との出合い
順調に拡大していた事業でしたが、2018年、母と夫のダブル介護を余儀なくされた私は、大好きだった仕事をすべて手放し、介護に徹する決意をします。
失意のどん底で参加した流水紋(川の源流に墨を数滴落とし、川の流れを和紙に写しとる画法)作家・重富豪先生の講演会で、私は大切な言葉と出合いました。「自分を大切にしなさい」「魂の喜ぶ生き方をしなさい」―気が付けば滝のような涙を流していました。
そんな私は重富先生から、流水紋で服を作るというバトンを受け取ることに。ここから、私の本当の人生が始まりました。もがき苦しみながら、1年をかけて流水紋を服に仕立て上げました。その過程で、私は「自分を生きる」ことを知ることができたのです。
気づけば海外コレクション、そして世界遺産・清水寺の舞台へ
2020年に神戸市郊外に予約制の小さなアトリエを構え、お客さま一人一人に向きあい、AURATiERの服でのスタイリング提案を始めました。すると、全国からお客さまが来てくださるようになりました。そして、「海外進出したい」「パリコレに出たい」「いつか清水の舞台に上がりたい」―これらの夢が、どれもAURATiERのお客さまがつないでくださったご縁によって、実現することとなったのです。
海外でのチャレンジを経て再認識した、日本の素晴らしさとこれまでのご縁。それらに感謝する奉納舞台を、京都・清水寺を貸し切って、5月16日に行います。当日は、「瑞々しく流れるような生き様」をコンセプトとしたブランド「瑞流人(みずるびと)」の奉納衣装をまといます。趣旨に共感してくださったアーティストたちとともに「自らの芸を天に捧げる」この舞台に、私自身の新たな挑戦として臨みます。
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