岩手から世界へ ~自分のために着る世界一のカシミヤ~
- 宇土 寿和 さん/ユーティーオー 代表取締役
- 1950年長崎県生まれ。旅行会社・アパレル会社を経て、92年、東京の南青山でニットブランドのbhf Internationalを創業。2000年、ユーティーオーに社名変更し、カシミヤニットに特化したブランドへ。11年、山梨県から岩手県北上市に工場を移転。14年、カシミヤが北上市のふるさと納税の返礼品に。東日本大震災の復興支援のために寄付も行っている。
https://uto-knit.com
旅行屋からニット屋への転身
海外旅行が夢だった1970年代、「アマチュア音楽家たちに海外で夢の演奏会やコンクールに出場する機会を作る」という変わった旅行屋でした。
好況だったファッション業界にもアプローチし、ヨーロッパのファッション視察のツアーを作って案内し、ご一緒するごとに誘われて、とうとうニット屋に転身しました。
カシミヤで世界を目指す
約10年間ニットアパレルの会社に勤めた後、92年に独立したものの、10年間は全くの低迷で、諦めて以前の旅行屋に戻るか悩みました。しかし、軽くて柔らかいカシミヤが忘れがたく、「カシミヤだけに絞って続ける」、どうせやるなら「世界を目指す」ことを決めました。
それは旅行屋の頃、パリへお客さまを案内している時、フランスの事情を教えていただいたデザイナーの島田順子さんの言葉が頭に残っていたからです。当時のパリには日本人はほとんどいなかったので、島田さんに生意気にも「どうして遠いパリで頑張っているのですか?」と問うと、「パリはね、ファッションでは世界一なのよ。世界一には世界中からお客さまが来るのよ。日本一なら日本中から来るでしょうけどね」と言われたのです。
世界一の原料探し
「カシミヤで世界一とは?」自問自答の日々でした。カシミヤニットは半年で移り変わる流行に左右されないのがベーシック。世界一のカシミヤ原料で日本人のモノづくりなら世界には負けないとの思いがありました。
世界一の原料探しのために、カシミヤの専門家たちから評される英国1社、イタリア2社、中国1社、日本2社の糸を取り寄せて職人さんに編んでもらいテストした結果、選択したのが日本の東洋紡糸工業でした。この中では一番高価でした。
天使のストール
この糸で最初に開発したのがストールです。首に巻いただけで幸せを感じる、軽くて柔らかく温かい、カシミヤ以外では絶対に味わえないストールができ、これを「天使のストール」と名付けました。
このストールがきっかけで事業が上向き、マフラーも作りました。
世界唯一のニットのオーダー
ニットは世界中で大量生産が常識の中、世界唯一といえる「ニットのオーダー」にすることにしました。世界で唯一だったら世界に対抗できるからです。
これを引っ提げて工場にお願いに回りました。しかし、すべての工場から断られ、実現するには自分で工場を作るしかなく、無謀にも山梨に工場を作りました。
その後、震災後の岩手県北上市に移転し、これを機にネット販売に力を入れました。「カシミヤを触らないのにネットで売れるはずがない」という周りの予想に反しネット販売は好評です。また、北上市のふるさと納税の返礼品でわが社のカシミヤ、「UTO」というブランドを全国に知っていただき、毎年2億円前後の寄付を頂いています。
日本のモノづくりを世界へ
ロンドンのサヴィル・ロウにある世界的名門の高級紳士服店・ハンツマンとのコラボも実現し、その他8カ国とのお取引もスタートしました。「わが岩手の職人たちが作ったカシミヤが世界へ羽ばたいた」と、岩手の皆さんが喜んでくださっているのが何よりです。
日本のモノづくりを世界に知ってもらいたいと一同励んでいます。
(無断転載禁ず)