さつまいもに人生をかけた女
- 新谷 梨恵子さん/さつまいも農カフェきらら オーナー
- 東京都出身。高校生の時にさつまいものかわいさに目覚める。東京農業大学国際農業開発学科卒業。2000年、さつまいも畑で結婚式を挙げ、新潟県小千谷市に移住。15年、(株)農プロデュース リッツを設立。「6次産業化プランナー」「さつまいも子先生」として、学校・自治体・農業関係団体など幅広い場でさつまいも愛と地域愛を語る。写真左は看板娘のさつまいも子さん。
https://ritzkirara.com
さつまいも人生の始まり
「さつまいもはなんで甘くなるか知っているか?イモには心があるんだ。甘くなってたくさん食べてもらおうってイモ自身が思うんだよ」。
焼きイモ屋さんのその言葉で恋に落ちた15歳の冬。そう、それがさつまいも人生の始まりでした。
好きな人(イモ)のことがもっと知りたくて東京農業大学へ進学。「俺んちは農家みたいなもんだ」という先輩の言葉を「念願の農家の嫁!」と思い込み、卒業後すぐ結婚。生まれも育ちも東京の私が嫁に来たのはさつまいもの特産地ではない新潟県小千谷(おぢや)市。「農家みたいなもん」とは「みたいなもん」であり、それは義母の家庭菜園でした。それでも「さつまいもで町おこしをしたい」という夢を持ち続け、農業法人でさつまいも栽培、加工、販売に携わり10年。地元の給食で愛される「さつまいもプリン」をつくり、さつまいもで会社をつくり、さつまいもカフェまでつくってしまいました。
さつまいもを使った商品開発
「さつまいも農カフェきらら」という私のお店は、関越自動車道小千谷インターを右に曲がって3秒のところにあります。
お店の名物はホカホカの焼きイモに希少なガンジー牛乳のソフトクリームを乗せた「焼きイモソフトクリーム」。「すぐ溶けてしまうので小千谷市に来ないと食べられませんよ」という想いも込め9年前に考案。当時は誰もやっておらず、実用新案として出願、特許も取得しました。2018年『マツコの知らない世界』に出演した際、「これを考えたあんたはエライ!」とマツコさんが大絶賛し、3回もおかわりしてくれた自慢の逸品でした。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で県外客が激減。「小千谷市に来てください」という言葉さえはばかられる事態となったのです。しかし、ピンチはチャンス!そんな時こそコロナの先の新しい未来へ種をまこう!そう思った私は脳内妄想未来予想図を引っ張り出し、焼きイモソフトクリームを外販型にした「イモぽんソフト」を開発!今ではふるさと納税返礼品や全国の冷凍無人スイーツ販売店などで好評をいただいています。
さつまいもの可能性
「第4次焼きイモブーム」と呼ばれる今日この頃。さつまいもを愛し、さつまいもと共に生きる人生の私にとってありがたき幸せイモブーム。同時に「さつまいもスイーツ」も注目され、「イモっぽい」なんて言われた田舎娘のシンデレラストーリーのように、かわいく彩りよくインスタ映えするスイーツに変身しています。
娘(イモ)の成長に胸が熱くなりますが、さつまいもは私の人生そのもの。掘りたてはまだ甘くない。じっくり熟成することで甘くなり、さらに低温で長時間焼くことでその魅力は最大限に引き出せる。夢をじっくり育て、温かい新潟県の仲間たちに囲まれて、応援してもらって今があります。出会いは財産。願イモ叶うのです。
まだまださつまいもの可能性は未知数。これからも出会ってきた皆さんにさつまいもで恩返しできるようなイモ人生にしたい。そして「さつまいもばあちゃん」と呼ばれる日を夢見て今日もイモ人生を楽しんでいこうと思います。
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