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2023年9月掲載

野菜を愛する料理人のこれまでと、今後と

池本 由言/土ノ音 代表

池本 由言/土ノ音 代表
広島県出身。大阪や東京で和食の修行後、岡山で野菜料理専門店を営んでいたが、コロナ禍をきっかけに、山口県の周防大島へ移住。農業をしながら、「野菜を楽しむ、知る、もっと好きになる」をテーマにオリジナルの調味料を完成させる。「土ノ音」ホームページで調味料の販売や、調味料を使用したレシピを公開している。 https://tuchinone.base.shop/

野菜の素晴らしさ

幼少期を広島県の山間で過ごし、昔ながらの有機農業、約30羽の鶏、川での洗濯など自給自足のような暮らしの中で野菜の本当の味を知り、育ちました。

大人になり、料理人として扱う野菜の味は全く別物で違和感を覚えました。後になって農業や消費、経済などさまざまな都合の中で、あの味が今は希少なモノになってしまったと気づかされましたが、当時は昔食べた味になかなか出合えず探していたことを思い出します。

料理人のキャリアとしては、1995年に大阪の有名料亭の門をたたき、東京・銀座の和食店などで20年間修行した後に独立。やはり野菜のおいしさを伝えたいという思いから、岡山で野菜料理専門店をオープンしました。

こだわりの農家さんと提携し生み出された味のおかげで順調な運営の中、さらに料理の表現力に幅を持たせるため、さまざまな国の野菜料理の書籍を読み、フランスやスペインなどに定期的に食べ歩きに行くなど進化をさせていました。

そんな中、知識に深みを持たせるため、薬膳アドバイザーの資格を取り、土と食と体の結びつきを学び、野菜の素晴らしさに改めて気づかされ、自身の今後を考えさせられるきっかけとなります。

 

瀬戸内のハワイで調味料の開発

いつかは幼少期のような暮らしに戻り、自然の中で生み出すものを発信できればと想像しつつ日常を過ごす中でコロナがやってきました。順調だった日々から一転、先が見えずあらがう方法も見つけられない状態に陥ります。ただ、これは想像をカタチに変えるチャンスなのではないかと捉えて移住先を探しました。

最初に訪れた「瀬戸内のハワイ」と呼ばれる周防大島(すおうおおしま)の人と気候の温かさと雰囲気の良さに引かれて直感で決断。3カ月後にはお店を閉めて移住することになりました。

自身の思い切りの良さと環境の変化に精神がついてこず、何度かメニエール病で倒れることがありました。しかし、島の人に助けられながら、築100年超えの古民家をDIYで修繕して暮らし、畑を耕し、工房を作り、調味料の開発に着手、安全基準などを整え、3年の歳月を掛けて、野菜を楽しむ調味料を完成させました。

 

土ノ音のこれから

屋号を「土ノ音」として畑から瓶詰めまで余計なモノは一切入れずに料理人としての思いを瓶に詰め、ちょうどコロナによる規制が緩和され始めた今年の3月に4つの調味料をリリースしました。

今後はラインアップを増やすとともに、薬膳の知識を基に季節と体の変化に合わせて必要なモノを瓶詰めしてお届けするサブスクのようなモノを始め、自然と食の情報発信に力を入れていきたいと考えています。

一つの小さな飲食店ではできなかった、より多くの方へ大切な情報とともに心とカラダに響き渡る一瓶を届けることで、食文化の向上に貢献できればと考えています。

  • 今年3月にリリースした調味料。左から「えび&味噌フォンデュ」、「菜種油ジェノベーゼ(からし菜)」、「島生姜シロップ」、「卵黄酢みそディップ」

    今年3月にリリースした調味料。左から「えび&味噌フォンデュ」、「菜種油ジェノベーゼ(からし菜)」、「島生姜シロップ」、「卵黄酢みそディップ」

  • 28年間料理人として腕を振るってきた経験を生かす

    28年間料理人として腕を振るってきた経験を生かす

  • 調味料に使用する農作物は自分の手で育てている

    調味料に使用する農作物は自分の手で育てている

  • 卵黄酢みそディップを使用した、人参のサラダ

    卵黄酢みそディップを使用した、人参のサラダ

(無断転載禁ず)

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