和紙で作る、人や空間に癒やしを与える花
- 古瀬 祥子さん/紙造花作家
- 1990年宮城県気仙沼市生まれ。2012年に文化服装学院オートクチュール専攻を卒業後、コサージュメーカーに入社し、コサージュの制作やデザインを行う。19年に独立し、紙造花作家「konohana」として活動を始める。和紙を使って手作業で花を制作。さまざまな媒体のイベントや催事に出店し、展示販売を行っている。
https://konohana.studio.site/
紙造花作家になったきっかけ
個人で活動を行う前は、コサージュのアトリエで長年布花を制作していました。
いざ独立すると決意したとき、布花で常々感じていた、布目の向きをそろえて裁断するため端材が多くなってしまうことと、専用の布を個人で仕入れるのがなかなか大変なことが懸念となり、布ではない素材で花を表現したいと思っていました。さまざまな素材を試したところ、強度があり端材のロスも少なく、繊細な表現にも対応できる「和紙」に偶然出合ったのがきっかけで紙造花作家「konohana」として活動を始めました。
「konohana」は、作品における3つの要素である「花」「和(=日本)」「紙(=神)」からヒントを得て、桜の語源ともいわれる日本神話の「木花咲耶姫(このはなさくやひめ)」から名前をお借りしました。
作品のコンセプトとこだわり
「和紙でつくる、生活に 空間に 人に そっと寄り添える花を」をコンセプトに、空間を彩る植物を制作しています。
紙造花の要となる色は、筆で染色することもあれば、すでに染められている極薄の和紙を複数枚貼り合わせて、透けた箇所の重なりから生まれるグラデーションで表現することもあります。染色した紙は全て手作業で裁断します。図鑑を見て花びらや葉の形を型紙に起こしたり、生花を解体して型を取ることもあります。厚みや強度を出すために複数枚の紙を貼り合わせたら、アートフラワーで使用されるコテという道具を使用し、熱加工で立体的に成形していきます。その後、出来上がった各パーツを組み上げてようやく一輪の花が完成します。
手間暇がかかる作業ですが、手仕事だからこそできる美しさをお届けしたいと思い制作しています。
和紙の魅力
制作で使用する和紙は主に障子紙です。内装材として使用される障子紙は破れにくく、熱にも強いです。花を熱加工する際に使用するコテは300度にもなるので、他の紙ではすぐ焦げてしまいますが、障子紙は焦げず・破れず加工することができます。
また、和紙特有の繊維質な材質により、染料が浸透しやすく思い通りの色を表現できる上、あたたかみのある風合いがあります。この風合いが最大限に発揮されるのは、面が広い大きな葉だったりするので、最近では花だけでなく葉が特徴的な珍奇植物にも挑戦し、ご好評いただいております。
今後の制作への思い
手仕事だからこそできる表現をより突き詰めて、暮らしに癒やしや安らぎを与えるような作品をこれからも制作していきたいです。
(無断転載禁ず)