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2023年1月掲載

彫刻は 「そこに在る」

西村 卓/彫刻家

西村 卓/彫刻家
1990年、岐阜県生まれ。2016年に多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了後、同大学で助手をしながら作家活動を続け、2022年に独立。東京や地元の岐阜を中心に個展やグループ展で作品発表を行っている。展覧会では大きな作品がメインだが、近年はミニ彫刻『可動産』シリーズやコースター、アクセサリーも制作している。
http://takunishimura.com

「彫刻家」になったきっかけ

「ノートの端っこに描いた落書きを前の席の友達に褒められた」。

まだ高校生だったある日。それはとても小さな出来事でしたが、何も取り柄がなかった私にとってはとても大きな事件でした。その事件をきっかけに、私は美大進学を決意しました。

初めて「彫刻」と出合ったのは、美大進学に向けて通い始めた美術予備校です。生きた鶏を前にしてデッサンを描き、粘土をこね、体全体を使って作品を作っていく。その体験に心の底から興奮し、直感的に「僕には彫刻しかない」と感じました。

その想いを胸に大学・大学院時代から作品制作に没頭し、個展やグループ展に精力的に参加しました。特に2018年に銀座蔦谷書店にて開催した個展『拡張都市』【写真①】では多くのお客さまや美術関係者の方に作品を知っていただくことになり、自身のことを「彫刻家」として強く意識するきっかけとなりました。

彫刻の魅力

私が思う彫刻の魅力は「そこに在る」ということです。

彫刻というと、例えば「美術館にある石膏像」や「お寺や神社にある木や石で彫られた仏像」などを想像される方が多くいらっしゃると思います。

しかし、現代の彫刻表現にはさまざまな素材(FRP造形や映像など)を用いた表現やショッピングモールで売られているような既製品(文房具や毛布など)を用いた表現、舞台美術のような空間演出(インスタレーション)など多岐に分かれています。

私の作品でも「無数の角材を集積し、彫刻する」や「彫刻作品における彫り跡についてアプローチする」という行為を繰り返した作品【写真②】、「一般的に公園等にある砂場を全く違う空間へ移設する」という作品【写真③】などがあります。

テーマやコンセプト(表現したい内容)に合わせてさまざまな表現方法や技法、素材を使って作品制作を行いますが、「そこに在る」という点においてはすべての作品に共通しています。

絵画や映像とは違い、「質量や質感が伴う物体として同じ地平に存在している」ということが彫刻の魅力です。

2つの取り組み

現在は自身の彫刻制作のほか、大きく2つの取り組みにも力を入れています。

1つは自身の彫刻制作の中で出てきてしまう「端材」や「端切れ」についての取り組みです。一般的には廃棄してしまう部分なのですが、「どうにか捨てずに活用できないか」と考え試行錯誤をしてきました。その中で生まれた『可動産』【写真④】というシリーズがあります。現在ではオブジェのほか、アクセサリー【写真⑤】としても展開しており、2022年に参加した合同展示会ではさまざまな業界の方にご興味を持っていただけました。

次に、ワークショップによる芸術普及の取り組みです。いくつかの企業と連携をしながら、「まずはアートをトコトン楽しむ」をテーマにさまざまなワークショップを0から企画し、商業施設や小学校、福祉施設にて実施しています。

今後も作品制作のほか、こうした取り組みにもより注力していきたいと考えています。

  • ①個展『拡張都市』展示風景(2018年)銀座蔦屋書店(東京都中央区)にて

    ①個展『拡張都市』展示風景(2018年)銀座蔦屋書店(東京都中央区)にて

  • ②個展『埋める/埋もれる』展示風景(2021年)Hasu no hana(東京都品川区)にて

    ②個展『埋める/埋もれる』展示風景(2021年)Hasu no hana(東京都品川区)にて

  • ③作品『記憶の情景を歩く』

    ③作品『記憶の情景を歩く』

  • ④作品『可動産』シリーズ

    ④作品『可動産』シリーズ

  • ⑤アクセサリー『IKOIKO』

    ⑤アクセサリー『IKOIKO』

(無断転載禁ず)

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