発酵DNAでサステナブル社会を実現
- 石垣 哲治 さん/発酵アップサイクルクリエイター
- 株式会社ソーイ代表取締役。東京大学大学院農学生命科学研究科で博士(農学)取得後、英国University of Southamptonで博士研究員として過ごし、2000年ソーイ入社。江戸時代から280年以上続く発酵DNAで、新しい発酵製品の開発を行う。最近は麹発酵技術に注力し、食品廃材をアップサイクルし新しい食品や化粧品への再資源化に取り組む。
https://soijp.com
ソーイの歩み
私の所属するソーイは、1984年3月に先代社長の父が設立した食品技術提供会社です。社名は「大豆」と「創意工夫」が由来です。
創業者の父は醤油醸造業の三男で、大豆発酵製品開発の道を歩み、静岡県知事褒賞、科学技術庁長官賞を受賞しました。先祖をたどると1739年の麹製造業開始に端を発し、日本酒醸造業、醤油醸造業と受け継がれました。残念ながら父の実家での醤油醸造業は廃業しているものの、私にその発酵のDNAが受け継がれ、かれこれ280年以上になります。私も2020年に静岡県知事褒賞を受賞しました。
人間の健康
近年、ソーイは「人間の欲求と地球の維持のバランスをとるために、すべてを活かしてつくることをコンセプトにしたイノベーティブな発酵会社」として活動しています。社是として「おいしくて健康になれるものを提供する」、「皆様に健康をお配りする」、「自然の本来あるべき姿を追求する」を掲げています。
医学の父・ヒポクラテスは「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」と言っていました。東洋医学でも医食同源といわれています。そしてWHOは健康の定義を「身体、精神、社会(地球)が良好な状態で、単に病気病弱な状態ではないこと」としています。
人は健康的な生活を願っていると思います。ですから私は常々食品を創り造る者として、身体も地球環境も健康であることの必要性を感じています。それが地球との共存共栄を考える、最近盛んに叫ばれるサステナブルだと思っています。
コーヒーかすを再利用した製品
サステナブルの観点からアップサイクル事業を立ち上げ、ごみゼロを同時達成させる、UP 0 TECH®プロジェクトを始めました。アップサイクルとは、創造的再利用とも呼ばれ、本来捨てられるはずのものを、新たなアイデアやデザインといった付加価値を持たせ、より良い品質、環境価値の高い新しい材料や製品に変換するプロセスのことです。
プロジェクトの第一弾として、これまでは廃棄物だった「コーヒーかす(コーヒーベース)」を廃棄ではなく発酵技術で食品へと全てアップサイクルし、スイーツや再ドリンク化製品として販売開始しました。
このスイーツは「COLEHA(コレハ)」といい、砂糖の量が、無糖、10%、40%、60%の4種類を販売しています。毎回の発酵や製造ごとによって異なった風味や味わいを醸しだします。ドリンクの「NEO COFFEE(ネオコーヒー)」は、コーヒーベースをペースト化して発酵させ、ミルクとチョコレートを混ぜました。コーヒーとしてもう一度飲むことができる液体状の原料です。
これらの製品は昨年10月末に発表しました。弊社地元の静岡新聞をはじめ、フジテレビ、テレビ朝日などの東京キー局で報道され、更にはForbes(アメリカで発行されている経済誌)でも記事が掲載されました。
食材の全てを活かす
人の三大欲求の内の食欲は、これまでごみを作り出してきました。おいしくない部分の廃棄がごみとなっているのです。しかしおいしくする加工を行えば、それは食材に変わります。
継承されてきた280年以上の発酵DNAの中に食材の全てを活かしきり、決して無駄にしないという考え方があります。食材のすべてを消費する努力と行為の実践が、今叫ばれるサステナブルの実践であると私は考えています。
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