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2022年10月掲載

室内飼いでも猫が猫らしく生きられる空間づくりを!

中村 裕実子/建築家・「猫と建築社」主宰

中村 裕実子/建築家・「猫と建築社」主宰
工務店に生まれ作業場を遊び場にして幼少期を過ごす。若い頃は建築には興味を持たず映像・音楽業界で仕事をしていたが、30歳頃建築に目覚めリフォーム会社、設計事務所勤務を経て独立。大好きな猫と建築が仕事になればと思いつき「猫と建築社」を立ち上げる。『ねこのきもち』『建築知識』など、猫や建築に関する雑誌等メディアでの監修も手掛ける。
http://nekotokenchikusya.com

「猫と建築社」立ち上げのきっかけ

「猫と暮らす住宅」に特化した設計を始めたのは、わが家の猫・ごにゃぞうのある出来事がきっかけです。当時は今ほど完全室内飼育という概念が浸透しておらず、わが家も出入り自由の状態で飼っていました。しかしある時、生活環境の変化がきっかけで外に出たまま帰って来なくなってしまったのです。毎日毎日探しては泣き暮れる日々。そしてひと月経った頃、近所で目撃情報が入り駆け付けると、そこにはガリガリに痩せこけ、やっとのことで生きているような状態の哀れな姿の猫がいました。

幸いにも一命をとりとめ、その後は猛省して完全室内飼育に切り替えたのですが、元々外が大好きだったためどうしても外に出たがってしまいます。でももう絶対に外には出せない。そう思ったら、いかに家の中だけでも楽しく快適に過ごさせてあげられるのかを真剣に考え始めました。それが後に「猫と建築社」の立ち上げへとつながっていきます。

人も猫も快適に暮らせる空間づくり

今では飼い主さんの意識も大きく変わり完全室内飼育が一般的になってきました。一方で、猫との暮らしのトラブルや困り事も出てきました。

一般的な住宅は当たり前ですが人間のために設計されています。しかし猫と人では生態もモジュールも全く違います。完全室内飼育の猫たちは人間と違い一生涯をその空間「だけ」で暮らします。それなのに猫の生態やモジュールを全く無視した空間で過ごさせることは猫にとって大きなストレスです。

猫と建築社では「猫がきちんと猫らしく過ごせる」ように最大限猫の生態を考慮した設計を心掛けています。

例えば、爪とぎ問題に関しては、爪をとぎやすく見た目も美しい天然素材を、猫が爪をとぎたがるポイントに貼り、猫にとってとても大切な行為である爪とぎを防止するのではなく思いきりさせてあげるようにします。

また、家族が集まるリビングや外が見える窓の近くには、垂直方向の動きが得意で高いところが大好きな猫のためにキャットウォークなどを設置します。いかにも猫用、というデザインよりは人間のための収納家具などと組み合わせて空間になじむようなデザインを心掛けています。

こだわりやポイントはあまりにもありすぎるので残念ながらここでは語り尽くせませんが、とにかくたくさんあるのです!

今までに6匹の猫たちと暮らし、保護活動や猫友を通して本当に多くの猫たちと触れ合ってきました。猫というのは実に個性的で、まさに十猫十色。たくさんの猫たちと触れ合ってきたことはそれだけ猫に対する知識・スキルも鍛えられ、今の仕事にとても役立っていると思います。今でも毎日が勉強です(笑)。

今後の夢や目標

今やペットを超えて大切な家族となっている猫たちに少しでも幸せな猫生を送ってもらいたい。その幸せそうな猫たちを見てご家族にも笑顔になってもらいたい。美しい建築の中で、美しい生活が営まれ、美しい心の子どもたちが育ち、美しい国へとつなげていってもらえたらいいなと思っています。

  • 廊下も猫が楽しい空間に

    廊下も猫が楽しい空間に

  • 猫が上れないように格子の横桟を外側に付けることで、安心して外で遊ばせられる中庭

    猫が上れないように格子の横桟を外側に付けることで、安心して外で遊ばせられる中庭

  • キャットウォークや隠れ家など猫が喜ぶ工夫がたくさんあるリビング

    キャットウォークや隠れ家など猫が喜ぶ工夫がたくさんあるリビング

  • 壁はあえて爪を思いっきりといでも大丈夫な素材に

    壁はあえて爪を思いっきりといでも大丈夫な素材に

(無断転載禁ず)

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