現代社会に広がるダンボールの可能性
- 小寺 誠さん/ダンボール伝道師
- 1986年生まれ。ダンボールの魅力を多くの人に伝えたいという思いを胸に、ダンボール伝道師として活動。ダンボールクラフト雑貨の販売やダンボールの工作教室を行う、クラフトマンエッセンスの代表を務める。400件以上の工作教室やワークショップを開催し、6000組以上の来場者を楽しませている。法人向けのノベルティや記念グッズなども作成。
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ダンボール伝道師となったきっかけ
「実家がダンボール工場の経営をしていた関係で幼い頃からダンボールとの接点はありました。しかし、元々そんなに興味はなかったのでその時は深くダンボールについて学んだりはしませんでした。
転機となったのは大学2年生の時、郵便局で多くの荷物やダンボールの仕分けなどをしていた深夜のアルバイト。この時、ダンボールをきれいに置いた時の耐久性などを無意識に感じていたのかは今となってはわかりませんが、ある日の休憩中にふと、ダンボールで家具を作れば世界が変わるのではないか?と思いついたのです。
実際に調べると、もちろん、その当時でも何社かは実際にダンボール家具の製作や販売を行っており、さらにダンボール家具自体も、巨匠フランク・O・ゲーリーが”ウィグルサイドチェア“としてすでに発表していて一定の認知度もあることが分かりました。
そのため、ここからは方向転換をし、より素材の知識を得ようと包装資材会社(主にダンボールを扱っている企業)を中心に就職活動を行い、その後の転職先で、ダンボールについて深く学んでいったのです。
その中で、製造業特有の問題点なども浮き彫りになっていきます。既存のパッケージ、包装資材販売に対してダンボール素材の魅力を生かしたオリジナル商品の販売は、すぐに結果につながりにくいという問題。
そうした現状を打破したいと考えた時に、独立した個人になれば商品作りはもちろん、他社の先行している魅力的な商品を取り扱うことができて、多くの人に商品の魅力を伝えられるのでは?と感じ、現在のセレクトショップ型の店舗としてスタートしました。
ダンボールの魅力
ダンボールの魅力は加工のしやすさです。必要な道具はハサミ、カッター、のり、木工用ボンドの4つがあれば誰でもダンボールで作品作りが可能。手でちぎって貼り合わせていくだけでも作ることができます。小さいお子さまであればそれでも十分楽しめることでしょう。大人の方でしたら、ピンセットや細かなハサミ、カッターなどを使えば精密な作品作りも可能です。
厚みや素材を吟味すれば、家具や遊具も作れます。何百キロの重さにも耐えられますので人が乗っても大丈夫です。機械を使えばさらに表現の幅は広がります。レーザ加工機を使えば表面だけを削り取るなどの加工が可能です。カットについても人の手ではなかなかできない0.1ミリ単位での細かな加工もできます。また、紙素材なので着色も簡単。ご家庭でしたら絵の具やペンなどで着色でき、色付きのダンボールなどを使うという楽しみ方も可能です。
このように、ダンボールという素材はその人の表現したいことを気軽に叶えてくれる魔法の素材なのです。
ダンボールの可能性
戦後、木箱からダンボールへ、大きな転換期を経て成長したダンボールという素材は、今も新しいことに挑戦しています。例えば、家具や遊具、子ども向けの工作グッズ、テレビスタジオの大道具、猫の爪とぎなど。最近ではストレッチ用具や防災トイレのような商品にも使われ始めました。3Dプリンターの性能は素晴らしいものがありますが、ダンボールにはそれと同じくらいかそれ以上の可能性があると確信しています。
また、ダンボールを使った作品作りを動画サイトなどで発表し、多くのフォロワーを集めるダンボールアーティストも増えています。こういった活動はダンボールが日常にあふれている素材だから可能なこと。誰でも気軽に加工できて多くの人に感動や驚きを与えることができるのもダンボールの強みです。
これからの目標や夢
現在の目標は、ダンボールの魅力を一般の方にも広げる活動をしていくことです。転機になったのは4月にテレビで紹介されたこと。番組では、ダンボールの素材の特性や作られる工程などの話が求められ、その時にプロフェッショナル側の知識と一般層の知識には大きな差があると感じました。
以前からブログなどでダンボールの素材の違いなどについて発信していたこともありますが、この機会に新しいワークショッププログラムとして、ダンボールについて学びながら工作も楽しめるプログラムを作り上げ、子どもたちや親子向けにダンボールの可能性を広げていく活動を始めていきたいです。
ダンボールは多くの可能性が秘められている素材です。厚みの違いや材質の違い、その他素材の特性などを知ることで、これからも新しいダンボールの可能性が引き出されていくでしょう。SDGs、資源の再利用が叫ばれている現代社会だからこそ、ダンボールの可能性は広がっていくと感じています。
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