「おやさいクレヨン」で彩る親子の時間
- 木村 七保子さん/mizuiro代表取締役
- 青森県生まれ。家の中で過ごす子どもが絵を描くときに外の自然へ考えを巡らせ、一面が白と灰色の雪深い青森の冬景色を彩りたい、という思いから、「おやさいクレヨン」を開発。2014年3月に「おやさいクレヨン」の第1弾を発売し、同年9月にmizuiro株式会社を設立。「おこめのクレヨン」の発売や「ぬりえコンテスト」の開催など活動は多岐にわたる。
https://mizuiroinc.com
「おやさいクレヨン」ってなに?
「おやさいクレヨン」は、お米と野菜からできたクレヨンです。
米油とライスワックスをベースに、色付けに使っているのは、規格外などの理由で廃棄される野菜や果物。基本の10色セットは「りんご」「カシス」「きゃべつ」「とうもろこし」など、どれも素材となった野菜や果物の名前がそのまま色名になっています。発色を補うために最小限だけ加えている顔料も、食品用途と同成分のもの。万が一、口に入れても安全な素材だけでつくっています。
「おやさいクレヨン」開発のきっかけ
2013年に「おやさいクレヨン」の開発を始めたとき、実はものづくりの知識も経験も一切ない素人だったんです。その前年に会社勤めを辞めてデザイナーとして独立したのですが、当時は起業するという意識はなくて、大きな理由は子育てとの両立が大変だったからです。子どもに寂しい思いをさせたくないけど仕事も休めない、保育園を休まなきゃいけないけれども面倒を見てくれる人もいない、そんな時にどうしたら働けるのかと考えた結果の末です。
「なんだ両立するには家に居ればいいんだ!」朝に送り出して、放課後にお家で迎えてあげられる。そんな夢みたいな働き方が家なら叶うんだ。なんて安易に考えた結果が「起業」と呼ばれるものでした。
ちょうどそのころ訪れた、藍染の展示会で天然由来の色の美しさに心を奪われ、そこから「野菜の色を生かした文房具が作れないだろうか」とアイデアが膨らんでいきました。
「おやさいクレヨン」の発売とこれから
そこからはスピード展開で創業支援関係の皆さんのサポートを得て補助金を活用、わずか9カ月で開発、2014年3月に発売までこぎ着けました。
野菜は地元農家さんや食品加工会社さんのご協力により確保することができ、クレヨンの製造は愛知県名古屋市にある老舗クレヨン工房にて半手動成型による温かみのある製品となりました。
おかげさまで発売より8年で累計出荷数は約16万セットに上ります。アジアを中心に海外にも販路を広げ、2022年夏からはアメリカでも販売開始予定です。
「おやさいクレヨン」を使う子どもたち
「おやさいクレヨン」で絵を描く子どもたちを見ていると、新しい色を手に取るたびに、まず匂いをかぐんですね。実際には「ねぎ」など特徴的なものを除いて匂いはほとんどしないのですが、絵を描きながら子どもたちは「りんごの匂いがする」と目を輝かせたり、豊かな想像力を発揮して「おやさいクレヨン」でお絵描きを楽しんでくれている姿にうれしくなります。
これからも「デザインの会社」として、「おやさいクレヨン」をはじめとするプロダクトを通じて、親子の時間をより豊かに彩るライフスタイルのデザインを提案していきたいと思います。
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