砂で描く物語で、人や文化をつなげたい
- 伊藤 花りんさん/サンドアーティスト
- 幼少期からのバレエの経験を生かし、楽曲に合わせたライブパフォーマンスを得意として各地で公演を行う。林原めぐみ、ディズニー・オン・クラシックなどさまざまなアーティストとのコラボを展開。映像分野では東方神起などのアーティストのMVを制作。近年では、道尾秀介著『風神の手』の装丁画をはじめ、雑誌や絵本の挿絵の仕事も手がけている。
サンドアートパフォーマンスとは、ライトボックスの上に置いた砂を手で動かして絵を描いていくことで、物語を展開していくパフォーマンスです。
9年ほど前にサンドアートに出合い、今はサンドアーティストとして活動しています。
子どもの頃の夢はバレエダンサーでした。母に連れられて5歳の時に見学に行った教室で、最初はどんなものなのかもよくわからずに始めました。大きくなるにつれ、発表会や大きな公演に出る機会が増えるごとに表現することの楽しさを感じ、舞台を見たときの感動を自分も伝える側になれたらいいなと思うようになりました。
その夢がかなわないことは高校生の時に察して違う道に進みましたが、今の表現の基礎や舞台での動き、心構えなどの多くを、必死に頑張っていたこの時に学ぶことができたと思います。
大学卒業後、表現する活動をしたいという思いは変わらず、上京して自主制作映画の制作に参加したり、そこで知り合った仲間に手伝ってもらいながら作品作りをしていました。
ライトボックスの上でビーズを動かして作るコマ撮りアニメーションを多く作っていた時に、砂を使うとリアルタイムで同じものが描けると知りました。
パフォーマンスの方がバレエの経験も生かせるのではと思い、たどり着いた表現が今のサンドアートパフォーマンスでした。
サンドアートをやりたいと思った理由は、音楽と合わせてどんどん絵が展開していくパフォーマンス的な気持ち良さと、お客さまと同じ時間を共有できるライブ感を味わえることでした。そして前の絵をどのように使って次の絵に展開していくかを考えるアイデア的な面白さに引かれました。
サンドアートは言語がいらない表現・砂・光というとても身近なものだけで作られているため、年齢や国を選ばずたくさんの方が一緒に楽しめる空間を作ることができると、実際に多くのお客さまの前でパフォーマンスやワークショプをさせていただくようになって感じました。
子どもたちとのワークショップでは、砂を動かしてできる偶然性の面白さだったり、発想や砂の触感を楽しんだり、正しい絵を描くことにとらわれずに楽しめるのがサンドアートの良さだと思いました。数年前、サンドアートの公演後に、ワークショップで2歳の女の子が「楽しー!」と言いながら手から砂を落として笑いかけてくれた瞬間、私もすごく楽しくてうれしい気持ちになりました。
作品を見てくれた方が感想を話し合ったりするような、会話のきっかけになる表現ができていたら一番うれしいなと思いながら活動しています。年齢や国、文化が違う人たちが一緒に見てくれたり、間を橋渡しできるような表現をしていきたいと思っています。
砂の物語が人や文化をつなげることができれば幸せです。
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