メカ木ズム -木のからくり作品-
- 高橋 みのるさん/からくり工房・工遊館 代表
- 1959年青森県生まれ。サラリーマン時代に趣味で始めた木工の魅力に取りつかれる。30歳で伝統工芸・八幡馬(やわたうま)製作工房に転職。34歳の時にからくり工房を起業・独立。木のおもちゃ、パズル、からくり作品を製作。近年は、コンピューター制御と木のからくりを組み合わせた「からくり時計」を製作し、県内外の施設、幼稚園、病院に納品している。
http://karakuri.jp
私が木工を始めてから今年でちょうど40年になります。見よう見まねで始めた「木彫」からスタートし、その後「木のパズル」作りから簡単な「動くおもちゃ」作りへと進んでいきました。
「からくり」と呼べるような作品にたどり着いたのは、20代後半頃だったと思います。当時は会社員だったので帰宅後の時間に、新聞社などが主催のコンペに出品し続け、入選・入賞・落選を繰り返し、どんな作品を作れば人とは違う個性が出せるのか?日々、模索する時間を過ごしました。
その結果たどり着いたのが、「木」と「メカニズム」と「遊び心」の3つの要素を組み合わせた新しい動きの世界『メカ木ズム』というコンセプトでした。
からくり作品を作る上で考えることは、まず、木で作った動く仕組みが外側からすべて見ることができて、ユニークな動きを演出しながら、メカニズムを含めて全体のデザインを行うという所にあります。
これまで製作したからくり作品の中で、代表的な作品は2つあります。
その一つが「サーフィンゲーム」です。ハンドルを回せば、規則正しく並んだ木の板が上下し、波が動いているように見えます。その板の上にサーフィン人形を置けば、人形は波に乗り進んでいきます。原理は実際のサーフィンと同じです。この作品は、20代の時に製作しましたが、展示会ではいまだに人気ナンバーワンの作品です。
もう一つは「からくり獅子舞」です。この作品は「八戸ポータルミュージアム はっち」のエントランスにあり、毎正時、獅子頭が「歯打ち」を行うからくり時計です。大きさは高さ四4メートル、幅4メートルもあります。獅子頭が一斉に行う歯打ちは、この地域の人々にとっては、子どもの頃から見ている夏祭りの時に披露される伝統の獅子舞なのです。
この作品製作には2年の時間がかかりました。まず、数百年前から伝統の獅子舞を行っているおがみ神社に行き、獅子舞の様子をビデオ撮影させてもらいました。獅子舞の動きを解析して、コンピューター制御モータを11個使用し、動きのプログラムを製作しました。からくり作品は、デザイン性とともに滑らかな動きを両立させ、なおかつ耐久性も保証しなければなりません。からくり獅子舞は設置から今年で丸10年になりました。大きなトラブルもなく今日も元気に「歯打ち」をしています。
今後の仕事内容を書かせていただくと、からくり時計製作の依頼があり、2021年秋にオープンする「徳島木のおもちゃ美術館」に納品させていただく予定です。
これからもからくり作品を見ていただくことによって、何か楽しくて、何かホッとする瞬間が味わえるような、そんな作品作りを続けていきたいと思っております。
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