わたしたちの手は、未来をつくるためにある〜バングラデシュで挑むキラキラ革命〜
- 渡辺 麻恵さん/エクマットラハンディクラフト工房代表
- 1980年東京都生まれ。2012年よりバングラデシュでストリートチルドレンの支援活動を行うNGO「エクマットラ」の活動に参加。妊娠・出産をきっかけに2016年にはエクマットラの女性支援部門としてエクマットラハンディクラフト工房を設立。母親たちが仕事や人生に誇りを持てる社会・環境づくりを目指して活動中。
公式ブログ https://ameblo.jp/ohtsuka-mae
キラキラペン販売サイト http://philotrade.shop/brands/ekmattra/
昔から、キラキラしたものやきれいな色を眺めるのが大好きでした。
父は絵を描くひとで、母は服飾の仕事をしていました。家の中にはいつも絵の具や絵画の本、いろいろな洋服、アクセサリーがあふれていて、私も自然と絵を描いたり、ものを作ったりして遊んでいました。
そんな私がバングラデシュに住み始めたのは2012年。バングラデシュでストリートチルドレンの支援活動をしている今の夫との結婚をきっかけに移住しました。
バングラデシュはまだまだ発展途上の国ですが、私の好きなキラキラが人々の瞳や生き方の中にある国です。
それは「今日よりも明日が良くなっていくんだ」という発展途上だからこそのエネルギーと、人々の内からあふれ出る生きる力があるからです。初めて旅行で訪れた時からその魅力に惹かれて、この国に住みたい、残りの人生を過ごしてもいいと思えるようになり移住を決意しました。
初めは夫の支援活動をお手伝いするというスタンスだった私ですが、自身の妊娠を機に子どもへの支援だけではなく、その子どもを産む母親たちに対して何かできないかと考えるようになりました。
きっかけは妊娠期間中に視察に行った妊婦保護センターです。そこには性的暴行により望まぬ妊娠をした女性や夫の家庭内暴力で命からがら逃げ出してきた女性、夫の再婚のために捨てられた女性…など想像以上に過酷な状況と孤独の中で出産しようとしている女性たちがいました。
彼女たちには住む場所も、仕事も、パートナーも、声を上げる場所すらないのです。
彼女たちを取り巻く環境や貧困という名の病は私たちが想像する以上に厳しく、出産後も仕事がなく行き倒れてしまう女性、栄養失調や病気で命を落としてしまう赤ちゃん、短時間で稼がなければいけないので妊娠前と同じように売春を再び始めるケースが後を絶ちません。そのような現状から、ほとんどの母親が心引き裂かれる思いで、自分の赤ちゃんの幸せを願い、富裕層の家族へ里子に出すのです。
出産後に子どもをどうしたいのか選択肢を与えられるものの、未来の見えない彼女たちに実質的な選択権はありません。わが子と一緒に生きるのか、手放すのかという人生の大きな選択をする際に、彼女たちなりの選択肢がせめてあってほしい、あるべきだ、と私はこの現実を知り強く思いました。
思い悩んだ末、始めたのがキラキラペン作りです。2016年には本気で彼女たちと人生を分かち合いたいと思い、貧困層女性の雇用を目的とするエクマットラハンディクラフト工房を立ち上げました。
この活動を行っていて一番うれしいことは、女性たちがこのペン作りを通じて表情がキラキラするようになり、自信や笑顔を取り戻していく様子を感じられることです。
理不尽な精神的・身体的な暴力に遭い、心が折れて絶望してしまっていた彼女たちが、自分自身の力で努力をし、仕事をし、きちんとした報酬を手にする。そうすることで「自分もやればできるんだ」と胸を張って誇りを持ち、自分の足で立ち始めます。経済的にだけではなく、そうした精神的な自立こそ、私たちの望むところであり、彼女たちの人生において大きな収穫といえるのではないかと思います。
私たちの手は物乞いをしたり、人にすがるためにあるのではなく、さまざまなものをつくり出すためにある。そして未来も、私たちはつくることができる。
これからもそう信じて、この国の女性たちが笑顔で子どもたちと未来へ歩んでいけるように、私たちはバングラデシュでもの作りをしていきたいと思います。
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