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2019年4月掲載

竹炭は地球を救う

西澤 真実さん/竹炭伝導師

西澤 真実さん/竹炭伝導師
1965年東京都文京区生まれ。緑が多い環境の目白台で育ち、子供の頃から昆虫や動物をこよなく愛す。経済社会の中、がむしゃらに働いていたが、心の根に眠っていた自然を愛する思いが開花し、「NPO法人いすみ竹炭研究会」の運営に至る。合言葉は「竹炭は地球を救う」。
https://www.isumitikutan.org

保険の営業20年、スーツにヒールでバリバリ仕事をしていた東京での私は、今は千葉県いすみ市の山の中でヘルメットをかぶり、安全靴、グローブをしてチェンソーを握って竹を伐(き)る。多くの出会い、出来事が私の人生を180度変えました。

保険の営業をしていたときに、生活習慣病やアレルギーなどを患う人があまりにも多く、疑問に思っていました。その原因が「食」であることに気づき、食を正せば病気は防げる…。それなら、私は「食」に関わる仕事をすべきだと決意し、20年間の保険人生に幕を閉じました。

日本は農薬大国であることを知り、生産地から改善したいとオーガニック農家への就活も始めたが腰痛が悪化し、断念。とにかく、生産地に身を置こうと選んだのが千葉県いすみ市。知り合いもいない新しい地。海に山、空が広くて、夜は満天の星。鳥の声、風の香り、最高の贅沢を感じました。いすみ市は日本で初めて学校給食のお米を全て有機米にしていることも知り、意識の高い生産地に来られたことに感動しました。

移住して2カ月経ったころ、運命の出来事が起きたのです。それは、竹炭普及会による「竹炭シンポジウムinいすみ」でした。竹に全く関心がなかった私ですが、竹の可能性を知り、徐々にひき込まれていきました。ラストを飾った講師、「大地の整体師」と呼ばれる高田造園設計事務所の高田さんが「大地は自らの再生力があるので人間が少し手を加えるだけで甦り、その解決を握っているのが竹炭である」とビフォーアフターを理屈も踏まえて説明してくれました。「これだ!私の探していたものは…!」とドカーンと音を立てて心に入ってきました。

竹炭は多孔質なので大小様々な穴が無限のごとくあり、土中に入れた竹炭の穴に微生物が住み着き繁殖し、菌糸が無限に増殖します。それらが有機物の分解を促し、土の保水性や浸透性を向上させ、ふかふかの土になり、大地を甦らせるのです。ほかにも竹炭は良い飼料になったり、河川の浄化にも役に立ちます。

竹を伐り出して竹炭にし、荒廃した里山や田畑に還す。山から川、農地、海、そのパイプラインを健全な状態に戻し、好循環を生み出す。「何て素晴らしい!」。ワクワクしました。

その後、高田さん主催の里山再生プロジェクトに参加し、山に溝や穴を掘って竹炭を入れて空気と水の道を作る作業が始まり、鉄砲水のように土の上を流れていた雨水が大地に浸透するのを見て、身を持って竹炭の素晴らしさを痛感しました。

一緒に参加していたいすみ市地域おこし協力隊の大竹真さんと竹炭の会をつくろうと意気投合し、プロジェクトに参加していた仲間に呼び掛け、2016年11月、「いすみ竹炭研究会」は18名でスタートしました。

人々の生活が里山から離れ、里山は放置され衰退。さらに繁殖力旺盛な竹が木々を枯らしながら、すごいスピードで広がっています。しかし、竹林整備には多額の費用がかかるため放置され、全ての里山が荒れた竹林になるのも時間の問題です。

竹林に困っている多くの人に会を知ってもらうため、まずは知人の竹林整備やイベントを含め月2回程度から始めました。しかし、この程度だと、竹の増えるスピードに追いつかず、大地再生のための竹炭も多く作れないので、徐々に活動量を増やし、現在は平日はほとんど作業をしています。

発足して2年間で整備した市内の現場は何と25カ所、総面積は約2万坪。現在も整備待ちが23件。メンバーも180名以上になりました。今までに竹炭を140回作り、作った総量は約80トン。たくさんの竹炭を大地に還してもらいたいので、私たちの作った竹炭は〈いすみのいーすみ〉という名前で破格で提供しています。造園業や農家の方に口コミで広がり、食の源の生産地から改善したいと願っていた夢も竹炭のお陰でかなっています。

私たちは、早急に放置竹林問題を解決するために整備を無料にしています。整備も無料、竹炭も格安。運営は皆さまの善意の支援である任意の寄付金で成り立っています。整備のお礼をという依頼者の方にも、お礼ではなく、背中を押してくれる応援の寄付金ならうれしいですと答えています。以前にお寺の竹林整備をした際に住職から会のオリジナルTシャツを頂いたことがあり、うれしくて涙が出ました。

応援の寄付金は作業をしてくれた方の人件費として使っています。寄付金が増えることで、大きな雇用が生まれ、整備も進み竹炭もたくさん作れるようになります。私たちの会は認定NPO法人を目指しています。そのステップとして18年にNPO法人化をしました。認定NPO法人は寄付してくださった個人や会社が、税制上の優遇を受けられるため、互いがWin-Winの関係になれます。環境団体として、雇用という、しっかりとした受け皿をつくることが活動の大きなうねりを起こします。私たちのような団体が全国に多く誕生したら、地球がどんどん元気になっていきます。

目先ではなく先見。私たちは、常に善き未来を見つめています。

竹炭が地球を救う理由を次のように考えます。
★竹炭は半永久的に分解されずに、地球の大地を再生し続けます。
★竹は繁殖力が高く、無尽蔵の資源となります(木は成長が遅く、資源化したら自然破壊につながる)。
★竹を炭にすることで、炭素を固定、二酸化炭素の排出量を25%も削減できる。竹炭を作れば作るほど温暖化防止になります。

私たちの竹炭物語は始まったばかりです。これからも、夢の実現のために前進してまいります。

  • 竹炭が大地を改善していくイメージイラスト(平沢由実)

    竹炭が大地を改善していくイメージイラスト(平沢由実)

  • 窯で焼く硬い炭ではなく、開放炉で焼く細かくて柔らかいポーラス(多孔質)竹炭

    窯で焼く硬い炭ではなく、開放炉で焼く細かくて柔らかいポーラス(多孔質)竹炭

  • 竹炭研究会のメンバー。手前は作った竹炭。竹炭は多くの人に使ってもらうため破格で提供している

    竹炭研究会のメンバー。手前は作った竹炭。竹炭は多くの人に使ってもらうため破格で提供している

  • 整備後の美しい竹林

    整備後の美しい竹林

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