白い車椅子が叶える「引き寄せとステキな奇跡」
- 才野 未和子さん/dow-corporation代表
- 1972年生まれ。高等家政専門学校で洋裁、専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。ホームウエアメーカーのデザイナーを経て結婚、離婚後はファッション専門学校で学び直す。結婚式場で働いていた際に白い車椅子を構想、バリアフリーウエディングの重要性を感じ、2009年に起業した。
http://dow-corporation.jp/
「障害を感じられる方の結婚式のシーンをサポートしています」。
私が名刺交換するときに自己紹介としてお伝えする決まり文句です。名刺に載せた「白い車椅子に乗ったうれしそうな新婦と、その新婦に優しくほほ笑む新郎」のほほ笑ましい写真に、名刺を受け取られた方は感銘を受けてくださるようです。
この白い車椅子が生まれて10年。あっという間のような、とても長かったような…いろいろな経験をさせていただきました。
当初「結婚式場にふさわしいきれいな車椅子」というコンセプトで製作しましたが、式場に営業に行くと「車椅子の結婚式は10年に2、3組あるかないか。お客さまを紹介してもらえるなら考えられなくもないけれど…」という反応。
式場に常設してもらうのは難しそうだと感じ、次は車椅子で日常生活をしている車椅子ユーザーの方に直接話を聞かせていただくことに。その方はご自身も数年前に結婚式を挙げられていて式場を探すのに一苦労した、と。
しかも当日、署名台が車椅子から高すぎて手が届かない…というハプニングがあったとのこと。「今では笑い話ですけれど、当日は焦ったし、あれだけ何度も打ち合わせしたのに見落としていましたね」とおっしゃっていました。そのお顔は少し残念そうに感じられました。
「才野さん、この車椅子はこれでいいけれど…。それよりも私たちの味方であってほしい」。そう彼女から言われて、私は車椅子ユーザーと健常のウエディングプランナーの架け橋になることが求められているのかもしれないと感じ、「バリアフリーウエディングサポーター」と名乗ることにしました。この世にない初の職種でした。
初めてのお客さまは車椅子ユーザーの新婦と健常の新郎のフォトウエディング。
「たくさんのサイトを検索しました。才野さんだったら専門としてやっているから相談できると思って」と連絡をいただきました。
当日を迎えるまで綿密に準備を重ね、撮影日も私がアテンドしました。私が製作した「伸縮性に富む、車椅子に乗ったまま着脱のできるウエディングドレス」をまとった新婦は大変感激され、新郎もうれしそうに新婦を見つめ、とてもステキな写真をお二人の元へ届けることができました。
その後も、私の活動は広がっていきます。多くのお客さまに「参列者の皆さんに印象に残る素敵な挙式だったと褒めていただけてうれしかった」など、私もうれしいお声をたくさん頂戴しました。表参道のチャペルで日本初の車椅子の模擬挙式を共同開催で行うこともできました。
白い車椅子は、これまでにも3本の映画に使用され、そうそうたる女優の方々に乗っていただきました。その映画を観た女性が「私もこの白い車椅子に乗って結婚式を挙げたい!」と夢を抱かれ、実際にその後、この白い車椅子に乗り挙式を挙げられた…。そんな引き寄せがステキな奇跡を叶えていきました。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、急速に日本国内は「ユニバーサル」「バリアフリー」「多様性」の意識が高くなっています。それはこんな生活の一部である結婚式のシーンにおいてもです。それが当事者だけでなく多くの人々への笑顔という奇跡につながっていると実感しています。
(無断転載禁ず)