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2018年2月掲載

1枚の写真がつなげた、写真を通しての地域おこし
―日本一星が美しく見える村 阿智村―

杉本 恭子さん/写真家

杉本 恭子さん/写真家
東京都出身。自然の崩壊に心を痛め、風景写真を撮り始める。竹内敏信氏に師事。2003年フリーの写真家に。「風を撮る写真家」として定評がある。長野県阿智村、三重県熊野にて写真を通しての地域おこしにも携わる。『撮り歩き旅の写真術』(新星出版)他多数出版。15年3月阿智村にギャラリー兼喫茶「彩り季節風 GOKA彩りの里」をオープン。日本写真家協会会員。
http://www.sugimotokyoko.com

コンピューター会社でシステムエンジニアとして勤めていたころ、そろそろ第2の人生をと考え、写真家を目指して風景写真を撮り続けていました。東京生まれ東京育ちですが、結婚、転勤を経て、名古屋で写真を撮っていました。写真雑誌からとても幻想的な桜の写真を見つけ、ぜひ撮影したいと阿智村(長野県)の「駒つなぎの桜」を撮りに出かけました。今から15年以上も前のことです。

意気揚々と出かけて行き、周囲の桜が満開だったことで満開の桜を期待したのですが、まだ蕾の状態。一緒に来ていた方々は残念に思い、撮影していませんでした。私も最初は、がっかりしたのですが、推定樹齢400年以上というこの桜の木の持つ力が、太い幹から感じられるようになり、夢中でシャッターを切ったのを覚えています。この駒つなぎの桜という名称には、義経が馬をつないだといういわれがあります。それを考えると樹齢は800年にもなりますが、ヒコバエかもという説もあり、定かではありません。

しかし、長い間、村の人たちを見守ってきていたことに違いはないと思います。その写真を某新聞に載せたところ、この阿智村の当時の岡庭村長から連絡をいただき、村のために写真を使って何かやってほしいという依頼が来ました。

ちょうど会社を辞めてプロの写真家として活動を開始したころでした。私にできることを考えながら、阿智村の伍和(ごか)という地域を中心に、村の担当の方と巡り歩き、とてつもなく美しい景観に驚きました。

傾斜のある丘陵地帯に上がると、目の前に南アルプスが広がり、駒つなぎの桜に匹敵するくらいの多くの一本桜や枝垂れ桜が点在していました。さらに日本全国でも数少なくなった、大きな柿の木もたくさん残っています。ここは市田柿の名産地でもあります。

私は、都会の方々にこの豊かな阿智村の自然に触れていただき、日本の山里の原風景を心行くまで撮影してもらいたいと撮影会を企画しました。村と撮影マップも作りました。今でも年2回春の桜と冬の大柿と南アルプスの撮影会、さらに季節ごとの撮影会も継続しています。今では「日本一星が美しく見える村」としてニュースにも取り上げられるようになり、毎回の撮影会で天気がいいときには、星撮影も必ず入れることにしています。

2015年には、この阿智村の伍和地区の空き家を購入し、「彩り季節風 GOKA彩りの里」としてギャラリー兼喫茶をオープンいたしました。月1回ここで写真教室を開催し、木曽や遠くは関西から多くの写真愛好者が集まり、楽しく写真表現について学んでいます。また年1回グループ展を開催しています。15年も地元の方々と一緒に撮影会を続けられているのは、他に聞いたことがないと著名な方々からもお褒めの言葉をいただいています。

都会と里、人と人、人と自然、世代と世代をつなげる写真を通してのフォトコミュニケーションは、私の大切なライフワークとなりました。ぜひ、一度阿智村へお越しください。近くには泉質のいい昼神温泉があり、多くの宿が皆さまをお待ちしています。

  • 駒つなぎの桜。この1枚の写真から15年の歴史が始まった

    駒つなぎの桜。この1枚の写真から15年の歴史が始まった

  • オドリコソウの春。桜を背景に

    オドリコソウの春。桜を背景に

  • 大きな柿の木と南アルプス

    大きな柿の木と南アルプス

  • 阿智村伍和の皆さん

    阿智村伍和の皆さん

(無断転載禁ず)

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