師匠ヤッサンとの出逢いから始まった紙芝居人生 ~おとなもこどもも笑い合える場を作るために~

- せんべい さん/紙芝居師
- 東京都三鷹市出身。マンガ大好き。役者を志すも断念し就職。2009年ヤッサン(安野侑志)の紙芝居に衝撃を受け弟子入り、ヤッサン一座の一員となる。14年社会福祉士として勤務していた法人を退職、紙芝居師として独立。京都国際マンガミュージアム、昭和館他、各地で紙芝居口演・講座を行っている。
https://senbei-kamishibai.jp
インスタグラムアカウント:@senbei_kamishibai
運命の分かれ道
「紙芝居」で思い浮かぶのはどんな風景?それは人によって違うのでしょう。幼稚園の先生が優しい声で読んでくれるのが紙芝居だと思っていた私のイメージは2009年4月にひっくり返りました。それはプロ紙芝居師養成オーディションで、ヤッサンの紙芝居に出逢った日。150人以上の大人が集まった会場が一つになり響き渡る笑い声。ヤッサンが語る言葉がその場を柔らかく包み込んで、人が心を開いていく。こんな紙芝居ができれば、楽しかった記憶はいつまでも残るでしょう。これが紙芝居?こんな紙芝居をしてみたい!と思い、ヤッサンに師事して紙芝居の未知なる道を歩き始めました。
「紙芝居屋さんになるのに必要なことは?」と聞いた私に「人柄です」とヤッサンは答えました。紙芝居の読み方ではなく、紙芝居屋としての生き方を教えてくれた師匠でした。
地域のお祭り、商業施設の催し、企業のPRなど、お声がかかればどこへでも自転車で跳びだします。懐かしいと思うおとなと初めて見るこどもが一緒に楽しめ、多世代交流にぴったり。京都国際マンガミュージアムでは海外からのお客さまも多いですが、言葉の壁を超えて笑い合うことができます。
演目は昔ながらの街頭紙芝居、オリジナル作品など、お客さまの顔を見ながら組み合わせを考えます。成年後見制度について伝える紙芝居は、前職(福祉相談員)の経験を生かし、シニア向け講座としても好評をいただいています。
紙芝居屋の駄菓子屋
紙芝居口演がない時にできることがないかと考え、2019年3月に駄菓子屋を始めました。店の近くにはマンションが多く、日によっては行列ができるほどのにぎわいです。
駄菓子販売だけでなく、お餅や餃子の出張販売、夜営業のおとなの駄菓子屋さん、そして紙芝居と琵琶やギターとのコラボライブなどのイベントも開催し地域のいい居場所になりつつあります。
夢を乗せて走る自転車
紙芝居舞台を荷台に積んだ自転車を真ん中に、こどももおとなも心を開いて笑い合える。そこでは隣の人との距離がちょっと近くなる。そんな場が増えて、ほんのひとときでも「生きているっていいもんだ」と感じてもらえたらうれしいな。紙芝居が作り出す場にはその力があると信じています。
絵とお話があり、それを語る人と見る人がいるからできる紙芝居。紙芝居屋だからこそ語れる物語があるはず。そのためには語りの技術も人柄もまだまだ磨いていかないと…。でもね、ヤッサンは「いいかげんがいい加減」とも言っていましたので、そこはイイカゲンにがんばります。
これからやりたいことも盛りだくさん。先輩の街頭紙芝居屋さんから譲り受けた肉筆画の街頭紙芝居『新ジャングルボーイ』(全111巻)『怪猫伝』(全42巻)の連続上演、宮沢賢治や小泉八雲作品のオリジナル紙芝居、成年後見紙芝居で全国巡業…。紙芝居師せんべいにしかできない紙芝居をお届けしたい。
遠くヤッサンの背中を追いかけながら、はるかなる道を歩き続ける紙芝居屋せんべいの運命やいかに(拍子木の音チョーン)!! 続きはまたのお楽しみ。いつかどこかでお会いしましょう。
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