102歳の手で輝く人生の証~心を照らす宝石の力~
- 金山 晴美 さん/ジュエリーブランドMARUU ディレクター
- オーストラリアの鉱山を探す過酷な旅を経験し、独自ルートで直接取引ができる数少ない日本人の一人。オパールの中で最も上質とされるオーストラリア産オパールの取扱量は国内トップクラス。加齢や病気の人向けにサイズが調節できる指輪を作るなど、誰でもストレスなく着用できるデザインに力を入れている。「コンプレックスや年齢に関係なくおしゃれを楽しんでほしい」と思いを込めて活動している。
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手、指、爪にコンプレックスを持っている方は少なくありません。アクセサリーは自分と縁のないものだと思っている方もいます。
ジュエリーブランドMARUUは、「指の関節が太いから入らない」「手がコンプレックスで見せるのが恥ずかしい」「育児が大変で今それどころじゃない」「加齢、関節に問題がある」など、悩みを抱え、美しくありたいのにさまざまな理由でおしゃれを諦めている方に元気になってもらいたい、そんな願いを込めて活動しています。
心を癒やすオパールの輝き
実は、私自身も指にコンプレックスがあり、宝石に興味がありませんでした。
そんな私がジュエリーデザインを始めたのは、女性として自信を失っていた30代にオーストラリアへ飛んだことがきっかけでした。いつも誰かと比べてしまう自分を変えたくて、誰も自分を知らない所でやり直したかったのです。
英語力も住む家も仕事もない状態で移住したため苦労の連続でしたが、偶然出合ったオパールに魅せられ、気づいた時には鉱山を探す旅に出ていました。日本を軽く1周するほどの距離を車で寝泊まりしながら移動する過酷な旅でしたが、オパールという7色に光る色彩に強く惹かれていきました。
日本に帰国してオパールの販売を始めたものの、素人で無計画だったため失敗もたくさんあり、休業に追い込まれるなど苦労は続きました。
しかし、お客さまが望むものを追いかけ、一人一人に心を込めていると、もう今月で終わりかもと思った時、いつも必ずどこからか大きな売り上げが上がりました。どん底に近い売り上げになってもご縁が必ずある。このようなことが起こるたびに、誰かの幸せを願うことで私自身が助けられているのだと感じてきました。
いくつになってもおしゃれを楽しんでほしい
2022年の冬、ご縁があって当時102歳の女性にハンドモデルをお願いしました。
長年手仕事をしてきた美しい手の表情の写真を見て、多くの女性から「感動した」「涙が出た」と反響を頂きました。現在105歳。MARUUのジュエリーを着けてデイサービスに通ってくださっていると聞いて勇気を頂いています。
「このおばあちゃまのようにいくつになってもおしゃれを楽しめるような会を開催したい」。そんな思いでいた時、同じ夢を持った方が福祉ネイリストさんと写真家さんをつないでくださり、昨年末に”モデル体験会omekashi(おめかし)“という活動がスタートしました。
omekashiはおしゃれをして「ファッションモデル」さながらの写真撮影に挑むイベントです。お年寄りはつい家に一人でこもりがちになり、やる気は失せてしまいます。そんな状況を変えることが目的の一つです。
モデルさんたちは、福祉ネイルをした後、シニア向けに工夫された天然石ジュエリーを自由に身に着けます。その後MARUUオリジナルワンピースを着てプロの写真家が撮影します。ワンピースはジュエリーが映え、どの世代が着てもおしゃれになるよう私がデザインしました。
第1回omekashiは最高齢94歳の女性に挑んでもらい、感動的な会となりました。年齢を重ねて輝く美しさを体現した写真は、ファッション雑誌『Vogue』の一般写真サイトPhoto Vogueに選ばれ、テレビ局や新聞で取り上げられました。
元気になったのはモデルさんたちだけではありません。写真を見た人からも、「エネルギーをもらえる」「年を重ねることが怖くなくなった」「すてきな写真をありがとう」と感謝されました。
最初はマスク姿で笑顔がなかった方や介護施設から家族に付き添われてきた方がイキイキとされ始め、「明るい気持ちになった」「このままどこかに出かけたい気分」と言われた時は心から感動しました。
「自分をかっこよく表現する楽しさに世代は関係ない」というメッセージを込めて、これからもこの活動を続けます。
宝石は心を癒やす光の存在
美しい宝石を身に着けると皆さん笑顔になります。何か意味があって地球が生みだした宝石は人々を魅了してやみません。宝石の光は体の芯まで行き届き、心の病を治す可能性を秘めています。
私は年を重ねることはかっこいいことと考えています。そしておしゃれを楽しむことは人を元気にします。すてきだけれど自分に宝石なんて…と思っている人がいたらぜひ手にとって見てほしい。内から湧き出るパワーの源になるかもしれません。
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