ビーズフラワー 魂を映す輝き ヴェネツィアから日本へ受け継ぐ新たな花
- 下永瀬 美奈子さん/ビーズフラワーデザイナー
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イタリア・ヴェネツィア発祥のビーズフラワー
2020年、ヴェネツィアンビーズはユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。ビーズフラワーに使われる小さなビーズは、「コンテリエ」と呼ばれ、ヴェネツィアンビーズの中で1番小さなビーズです。ガラスビーズで作られた花は、まさにヴェネツィアンアート、工芸品の一つです。
ビーズフラワーとは、2㎜程度のガラスビーズを1粒1粒、専用のワイヤーに通し花や葉の形を作り、それを組み合わせて実物大の花に仕立てたものです。光輝くビーズの花は、時には本物を超える美しさだといわれ、今もその歴史を残しています。
ビーズフラワーとの出合い
私とビーズフラワーとの出合いは、1989年のニューヨークでした。初めて見るビーズの花はとても美しく、小さなガラスの粒は色や形もさまざまで、まさにアートと呼ぶにふさわしいものでした。その魅力にとりつかれ、早くも30年の月日がたちました。今でもその思いは日々深まり、この魅力を一人でも多くの方に伝えたい!そんな思いから2018年にイタリアへ渡り、ビーズフラワーのルーツをたどる旅が始まりました。
ビーズフラワーの後継者に
行く先々でご縁があり、すぐにビーズフラワー100年の歴史を持つ大家、ジョバンナ・ポッジ・マルケージさんにつながりました。ジョバンナさんは、ヴェネツィアンビーズフラワーを復活させ、一大ブームを起こしたネラ・ロペス・イヨーロさんのお孫さんにあたる方です。ビーズフラワーのバイブルと呼ばれる本『I Fiori di Venezia』を出版されています。
そのジョバンナさんから2019年、思いがけずビーズフラワーの歴史と技術を継承することになりました。ヴェネツィア発祥のビーズフラワーの歴史を後世に伝え、さらなるビーズフラワーの発展を約束して帰国しました。
ビーズに魂を込めて
ビーズフラワーを作る際、基本となるビーズをイタリア語で「アニマ」といいます。アニマとは「魂・生命」という意味で、ビーズに魂を込めて作品を作り出す、この言葉を知った時、胸が熱くなりました。また、帰国時にジョバンナ家が二五年集めてきたたくさんのビーズや、ネラさんの時代から受け継がれる歴史的なパーツ、貴重な資料とビーズを託されました。そのこともあり、私の代表作『飛翔』がヴェネツィアンビーズの聖地ムラーノ島のガラス美術館に常設展示されました。美術館搬入の際は、美術スタッフに作品の展示方法、ライトの当て方まで一つ一つ的確な指示があり、作品は最高の場所で美しく光輝いています。
日本では箱根ガラスの森美術館 ヴェネチアン・グラス美術館の企画展で展示され、ヴェネツィアと日本の二つの美術館に唯一のビーズフラワーとして作品が展示されました。
イタリア発祥のビーズフラワーが日本人の私に引き継がれ、両国の技術を融合させた新しいビーズフラワーとなり、これからその未来をつくっていくことになります。今後はヴェネツィアから始まるビーズフラワーの歴史を伝え、日本発のビーズフラワーとしてイタリアをはじめ、世界中にビーズの花を咲かせていきたいと思います。
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