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私の体験

2023年7月掲載

塩水で描き作る海の世界 美しく無常な”塩水アート”

ヒラシマ マイさん/塩水アーティスト

ヒラシマ マイさん/塩水アーティスト
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「塩水(しおみず)アート」とは

黒など濃色の水彩紙のボードに塩水をつけた筆や竹串で描き、裏から火の熱で炙ったりドライヤーや自然乾燥などで水分を飛ばし結晶化させることで、描いたカタチが浮かび上がります。

表現したいものによってやり方を変え、自然乾燥をさせながら紙の上で塩の結晶を育てて大きくしたり、塩の結晶を塩水と混ぜながら画面に盛っていき、紙の上で塩水を沸騰させながら煮詰め、煮固めて定着させたりもします。出来上がった結晶は強い光が当たるほどキラキラと輝きます。

このような制作方法で塩だけでは成立しないことから「塩水アート」と名付けました。接着剤やコーティング剤などは使用していません。そのため、このアートには大きな特徴があり、塩の持つ性質によって変化が起きます。

これを前提に作り込んだ作品たちを、無常系 独自技法の「塩水アート作品」としており2012年より制作、翌2013年に初展示。試行錯誤を繰り返しながらも、少しずつ認知されてきています。

きっかけは「もったいない」

私は子どもの頃から絵を描くことやものづくり、そしてイルカや海が大好きでした。デザイン学校を卒業後は実家の寿司屋で働きながら創作活動をすることを選び、「今ここにいる私だからこそできること、やろうと思えることを絶対に見つける」と考えていました。

お店で扱っている塩蔵の海藻を塩抜きする際に、大量の塩がシンクに流れていくのを見ていて「もったいないな」と思い、これで何か作れるだろうと。その塩をとっておいて、水と合わさりドロっとした状態で焼きながら造形し立体のサンゴを作りました。その制作過程で飛び散った塩水の水滴が、乾燥して美しいリング状の結晶になっているのを見て「これは平面(半立体)もできる」と気付き、10年ほど前に現在の形式になりました。

その塩は日常的に出るので、フィルターで塩水をろ過し、鍋で煮詰めたものを保管しており、こういった塩をメインに使用するようにしています。

性質を利用し、無常を体現

塩=塩化ナトリウムには吸湿性・放湿性という性質があります。

塩の臨界湿度である(相対湿度)約75%を境に、空気中の水分(湿気)を吸ったり吐いたりと、結晶の表面では溶解と析出(せきしゅつ)が繰り返されることで結晶同士が固結していきます。常に低湿度下でない限りは、湿度によって作品自体がまるで生きているかのように変化していきます。

基本はこれを前提にストーリーや画面構成を考えて制作しています。例えば『ほしをきく』という作品は、ジンベエザメがプランクトンを吸い込む流れが見えるように、制作段階で仕込んでおいたものです。自分の作品たちの変化を観察し、経験から予測してやっていますが、ここまでうまくきれいにいったのを見た時は驚きました。

ただ薄くなる一方ではなく、逆に白が濃くなったり、長く高湿度が続いたことで塩が湿気を吸い過ぎて水滴になったり、画面上で再結晶化しニュアンスが変わるなど…。私自身の想像を超えていくのが、本当に面白いところです。作者の手を離れた後も、その場の環境によってひっそりと変化を繰り返しながら、いずれは世界に還って(消えて)いきます。

新たな可能性を求めながら

きっと多くの人々が塩に対して特別な興味を持っていないように、元々は私もそうでした。ですが、塩水アートを作っていく中で、それまで気にも留めていなかった観賞用の塩の面白さに気付いてしまってからは可能性の塊、原石であり、光り輝く宝石のようです。その美しさや面白さも含めて、引き続き共有していければと思っています。

コロナ禍で激減してしまったのですが、自分のペースで作品や展示の機会を増やしていき、実物の作品を少しでもたくさんの方に直接見て・感じていただけたらうれしいです。

  • 塩水アート作品『ほしをきく』上部、変化の過程 (上から2019年10月制作→2020年4月撮影→2021年5月撮影)

    塩水アート作品『ほしをきく』上部、変化の過程
    (上から2019年10月制作→2020年4月撮影→2021年5月撮影)

  • 初期に制作した立体作品の塩珊瑚(2012年)

    初期に制作した立体作品の塩珊瑚(2012年)

  • 塩水アート作品『流転』夕日に照らされて輝く塩の結晶と凹凸感(2021年11月制作)

    塩水アート作品『流転』夕日に照らされて輝く塩の結晶と凹凸感(2021年11月制作)

  • 塩水アート作品『いただきへ』の変化 (左から2017年9月制作→2020年5月撮影)

    塩水アート作品『いただきへ』の変化
    (左から2017年9月制作→2020年5月撮影)

(無断転載禁ず)

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