連載コーナー
私の体験

2023年3月掲載

今までにないスノーグローブを 〜作品の世界観を精巧に再現〜

石田 兵衛さん/スノーグローブ作家

石田 兵衛さん/スノーグローブ作家
お問い合わせ先
https://hyoue.tokyo/
【インスタグラム】
https://www.instagram.com/hyoue_artglobe/
スノーグローブ(スノードーム)との遭遇

僕にとってそれは旅先で売られているつまらないお土産、という印象だった。中身の作りがゆるい安物で、家に着いた途端に買ったことを後悔するような代物だ。球体に閉じ込められた世界観には心惹かれるものがあったのだが、自分で作れるとは思わなかったし、そういったことを調べるほどのモチベーションも湧かなかった。そんな認識が一変したのは、アメリカ人のスノーグローブ作家(正確には現代美術の作家)を紹介した記事を読んだ時だ。その作家の作品は既存の概念を覆す素晴らしいものだった。皮肉とユーモアを利かせたその世界観にはとても魅了されたし、自分でもこれを作ってみたいという動機になった。

作り方は何処に?

手始めにWEBで作り方を検索したが、瓶を使ったものやフォトドームなど簡易的なものがメインで理想とは程遠い。そんな時に見つけたのが、日本スノードーム協会のインストラクター講座募集の告知だ。インストラクターにはなるつもりはないが、作り方は学べるらしい。それならと応募したが、参加者は僕以外全員女性だった。後で知ったことだが、日本でスノーグローブ作家として活動しているのは女性が多い。講座では、中に入れる水は精製水を使うこと、ウエットスーツの修理に使う接着剤を使うなど、基本的なことをいろいろと学んだ。ただ、仕事で長年ミニチュア製作に携わってきたので、中身を作ることでの発見はなかった。

さらに進化させる

水中では物が大きく見えるので、中に入れる物は見えているよりもとても小さく作る必要がある。それを手で作るのは困難だし、自分が目指しているディテールは表現できない。そこで本業で使用している3Dソフトでモチーフを作り、それを3Dプリンターで出力して着彩して仕上げている。これでかなりの細かい部分まで製作が可能になり、自分の理想に近づいた。

そうして作品がたまったところで念願のスノーグローブの展示を行ったのだが、ドームの中でパウダーが舞っていない状態ではスノーグローブの魅力が伝えきれない。誰かが展示会場で実際に操作しない限り、それを見せることができないのだ。観客にそれをやらせるには危険が伴う。そのジレンマについて考えていたところ、たまたま知り合ったおもちゃメーカーの方がある部品を中国から取り寄せてくれた。

新しい展示の仕方

その部品というのは電動式スクリューが蓋についていて、モーターの仕掛けで撹拌(かくはん)できるものだった。これに一定時間だけ作動する回路を設計して、更に人感センサーを組み込んで人が近づくとスイッチが入るようにした。これを台座に組み込み、3Dプリンターで出力したものをテストした。これで自分が理想とするスノーグローブの展示方法が完成した。これを量産して次の展示に使用したが、観客にも好評でうまくいったという手応えを掴んだ。その後もこれをベースに改良を加えている。

水中で光らせる挑戦

現在取り組んでいるのは、スノーグローブにおける照明だ。水中では通電してしまうので普通のLEDは使えない。中国から取り寄せたLEDは水中でも使用可能で、サイズもかなり小さい。それを使って灯台のスノーグローブを作っている。新しい試みとしてスイッチには傾きセンサーを組み込んでおり、振ると1分間だけ灯台のように明滅を繰り返す。配線の整理やバッテリーの取替え方法などをクリアすれば完成だ。

このように今までになかったスノーグローブの表現を探りつつ、今後も作り続けていきたいと思う。

  • ANA公式インスタグラムとのコラボ作品

    ANA公式インスタグラムとのコラボ作品

  • 画家エドワード・ホッパーの作品をモチーフにしたスノーグローブ(展示用)

    画家エドワード・ホッパーの作品をモチーフにしたスノーグローブ(展示用)

  • プラスチックゴミによる海洋汚染問題をアートで表現した展示『“名画になった”海 展』のスノーグローブ(展示用)

    プラスチックゴミによる海洋汚染問題をアートで表現した展示『“名画になった”海 展』のスノーグローブ(展示用)

  • スピッツ『紫の夜を越えて』のミュージックビデオで使用された作品

    スピッツ『紫の夜を越えて』のミュージックビデオで使用された作品

(無断転載禁ず)

連載コーナー

Wendy 定期発送

110万部発行 マンション生活情報フリーペーパー

Wendyは分譲マンションを対象としたフリーペーパー(無料紙)です。
定期発送をお申込みいただくと、1年間、ご自宅のポストに毎月無料でお届けします。

定期発送のお申込み

マンション管理セミナー情報

お問い合わせ

月刊ウェンディに関すること、マンション管理に関するお問い合わせはこちらから

お問い合わせ

関連リンク

TOP