古くて新しいボードゲーム「ツイクスト」
- 今泉 匠さん/日本ツイクスト協会会長
- お問い合わせ先
日本ツイクスト協会
http://www.jptwixt.com/
ボードゲームの広がり
日本でボードゲームに注目が集まりだしたのは東日本大震災後の「節電ブーム」からだ。電気を使わずに家族で集まって遊んで過ごせるツールとしてメディアで頻繁に取り上げられ、広く認知されるようになった。2021年現在のコロナ禍のステイホームの状況もまた巣ごもり需要が増えたおかげで、ボードゲームが広まるよう作用している。
昨今では全国にボードゲームを遊べるボードゲームカフェやバーなどが200軒以上できているという。ゲームを持っていなくても、ルールを知らなくてもお手軽に遊べる場所として人気だ。
ツイクストと日本ツイクスト協会の活動
ツイクストはペグと呼ばれる駒を盤上に挿して、そのペグ同士にブリッジという橋を架ける。その橋の繋がりを盤の端から端までの対岸に架けきったプレーヤーが勝つというボードゲームだ。勝敗はシンプルで一目瞭然だが、盤は広く、勝利するためには深い洞察力が必要なところは囲碁や将棋を思わせるゲームだ。
ツイクストが初めて世に出たのは1962年のこと。ボードゲーム愛好家の間では有名だが、絶版で手に入らないゲームだった。ツイクストは日本の愛好家の間で「20世紀の囲碁」とも呼ばれていたことがある。
日本ツイクスト協会は2016年に発足してから、日本でツイクストを広めるために活動してきた。ツイクストに関する書籍を発行したり、ツイクストを体験してもらうイベントをしたり、中古のツイクストを集めて販売したりと日本におけるツイクストの普及を牽引(けんいん)してきた。
ツイクスト日本版の発売
日本でツイクストを広めるうえで一番のボトルネックだったのが、ゲーム本体の現行品が無いことだった。日本ツイクスト協会で発売することも試みたが、さまざまな問題点があり断念した。それがジーピー社の手によって2020年に発売されることになった。ジーピー社は日本有数のボードゲーム出版社であり、名作ボードゲーム『カタン』の日本での販売も行っている。
ジーピー社によってツイクストは『ツィクスト』として少し名前を変えて発売された。『ィ』と表記を変えたのは『ツィクスト』を広めていく意思を込めたのだとジーピー社の社長が語っている。
コロナ禍での発売はなかなか難しいものがあった。ジーピー社の『ツィクスト』の発売がちょうどコロナの流行と重なってしまい、対戦できるイベントやコミュニティ、プレイスペースへの援助などを本来は多く用意するはずだったが行えなかったからだ。
コロナ禍でのツイクスト
コロナ禍のツイクストは苦戦していたが、ネット上での広がりが出てきている。いまだに、本格的な対戦アプリは存在しないツイクストだが、ディスコードというコミュニケーションアプリを使ってネット対戦を行うコミュニティが盛んだ。現実でのツイクスト対戦イベントも定期的に行っている東京新橋の囲碁・将棋喫茶樹林さんがコミュニティを形成しており、今日本で一番ツイクストの熱いコミュニティとなっている。
今年の9月にはツイクストの世界的な大会がオンラインで行われた。マインド・スポーツ・オリンピアードというチェス等の複数のゲームの世界的な競技大会で、そこにツイクストも含まれており、今年は日本から多数のプレーヤーが参加した。惜しくも優勝することはなかったが、盛り上がりを見せた。
また、日本ツイクスト協会では、『カードツイクスト』というツイクストの拡張ゲームを発表することで後押ししようとしている。カードの指示により手を決めるという内容で、ツイクストをより親しむための拡張セットだ。カードツイクストは11月に東京で行われた日本最大の「電源を使用しない」アナログゲームのイベント・ゲームマーケットで頒布された。
日本でのツイクストはまだまだ始まったばかりだ。コロナ禍の中でも少しずつだが前進もしている。新たに登場したこのゲームの動きを注視してもらいたい。
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