すぐに結果が出ないものは無駄?
- 水谷 伸吉さん/森林保全活動家
- 大学卒業後、株式会社クボタに入社。2003年よりインドネシアで熱帯雨林の再生に取り組むNPOに移る。07年、坂本龍一氏の呼びかけによる森林保全団体「more trees」の創立に伴い活動に参画。日本各地での森づくりなどさまざまな活動を手掛けている。
ここ数年、気候の異変が続いています。夏の猛暑、季節外れの台風、頻発するゲリラ豪雨や線状降水帯。「50年に1度の記録的な大雨」といった報道が毎年どこかで報道されるなど、明らかに何かがおかしい、と皆さんも感じているのではないでしょうか?
森林に目を向けると、世界では1秒間にテニスコート12面分の森林が失われているといわれています。
気候変動の要因といわれている二酸化炭素の排出量を減らし、生態系を回復させ、土砂災害を防止するために、私は20年前から日本やインドネシアで木を植える活動をしています。この活動を始めた頃、「あなたが木を植えたところで、地球環境が良くなるはずがない。やっても無駄だ!」と言われたことがありました。
確かに、こうしたエコ活動を自分ひとりが行動したところで、世の中は変わらないんじゃないか?という思いは皆さんもあるかもしれません。
果たしてそうでしょうか?
「やっても無駄だ」と否定された当時、自分自身にこう言い聞かせて悔しさをこらえました。“そんな人は放っておけ。最悪なのは、批判や文句だけで何も行動しない人。そんな人は、きっと「自分が選挙に行ったところで、政治は変わるわけがない」と最初から諦めてしまうような人なんだ”と。
皆さんもポイントやマイルを貯めるなど、すぐに結果が出ないものの、無意識に日々コツコツと続けていることがあると思います。推し活だってそうです。そうした行動は、決して無駄だと思ってはいないはずです。
エコ活動もそれと同じで、フードロスを減らす、電気をこまめに消す、エアコンの設定温度を変える、できるだけ公共交通機関を使うなど、木を植えるだけでなく今すぐできることがたくさんあります。ポイ活で貯まったポイントを環境団体に寄付するなど、楽しみながら取り組むこともできます。
私がインドネシアに10年前に植えた木は15mを超え、5年前に北海道に植えた木は4mに育ちました。何か行動を起こせばいずれ必ず結果は出ます。
私たち1人1人の行動は微力かもしれませんが、決して無力なわけではありません。
長年、私と一緒に木を植える活動に取り組んでいた音楽家の坂本龍一さんは生前、こんな言葉を残してくれました。
“Think pessimistically, act optimistically”ー考えるときは悲観的に、行動するときは楽観的にー
あまりにも問題が大きすぎて無力感におそわれそうなとき、私はこの言葉を思い出すようにしています。
まずは小さなことからでも始めてみませんか?
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