呪術や呪いはお金に近い!?
- 田中 俊行さん/オカルト・呪物蒐集家
- 幼少の頃より奇怪な物や怪談話を好み、現在も怪談・呪物蒐集に勤しむ。近年「稲川淳二の怪談グランプリ」や「怪談最恐戦(竹書房主催)」で優勝を果たす。各メディア出演やトークイベント、YouTubeチャンネル「トシが行く」等でも活躍中。
私の職業は怪談を集めながらライブで怖い話をしたり、本に書いたりすること。怪談を集める過程で「呪物」と呼ばれるものも集めています。
呪物は本来は、人の願いを聞いたり守ったりするものです。正しく祀れば福をもたらしますが、疎かにすると災いをもたらします。調べていくと、呪物は世界中に存在することがわかりました。その奥には人の悩みや希望、恨みなどあらゆる感情が存在し、それを叶えるための呪術師が存在することも知りました。日本にも呪術師はいましたが、科学の発展とともに信じる人が少なくなり、消えゆく存在となりました。
私は呪術や呪いはお金に近いような気がします。お金も人が信じるからこそ、その価値を発揮するわけで誰も信じなくなると価値はなくなる。怪談や妖怪の世界もそう。これからこの世からなくなっていくでしょう。
私には霊感のようなものはなく、幽霊などははっきりと見たこともありません。それでも稀に不思議な気配を感じたり説明できない事柄を体験したりすることがあります。見えない世界に意識を向けると普段見ている景色が違ってくることがあります。何事も興味を持つことが大事で、そこから新しい世界が広がっていきます。
呪物一つにとってみてもその土地の歴史につながり、人々の生活、その時の思いなどがわかります。なぜその場所で呪物が作られたのかを調べると文化や背景が見えてきます。
私は今、キューバの首都ハバナにいます。黒人のある宗教に入信をするためです。この場所はコロンブスが到達以来、スペイン領となりました。もともと住んでいたインディオは殺害され、黒人奴隷がアフリカから連れてこられました。その後アメリカによる支配が続いたのち、カストロの指導する革命が起き、独立という歴史があります。
そして奴隷として連れてこられたアフリカの黒人たちが自分たちのアイデンティティーを守るための数々の信仰があった。それに非常に興味を持ったからです。そしてそこには呪物も存在する。
過酷な労働のもと、生きていくための手段としての信仰と呪物。社会主義国でありながら経済自由化が進むキューバはこの先どんどん近代化します。信仰や呪物もなくなっていくかもしれません。かすかに残る信仰と呪物を手に入れることが私が現地に赴いた理由です。
私とは縁もゆかりもない土地キューバ。もし信仰と呪物を手に入れることができたなら、また見知らぬ神とつながる気がします。
皆さまも小さい心のひっかかりを大事に、それに耳を傾け興味を持ってください。自分の内なる世界が必ず開けると思います。
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