家庭環境が良くなる秘訣
- 齊藤 正明さん/講演家
- 会社員時代、会社命令でマグロ船に乗せられる。嫌々での乗船だったが、不便な環境で助け合って働く漁師の姿に感銘を受ける。退職後、講演家となる。現在、マグロ船流のコミュニケーション術を、企業や自治体などで、講演を通じて伝えている。著書多数。
今から約20年前、私は普通の会社員でした。当時は、『鮮魚の鮮度保持剤』の開発をしていました。するとある日、上司から、「現場を見てこい」と命じられ、マグロ船に乗せられました。船は、『出港したら40日以上はコンビニにも行けない』という不便な環境でした。ただ、私が乗せられたマグロ船は、とても売り上げの良い船で、不便な環境でも、助け合いながら働いていました。
このコラムでは、「家庭でも、この『秘訣(ひけつ)』を実行すれば、家庭環境はもっと良くなるのに…」と、本音で感じたことをお伝えします。
「船では、マグロが毎日食べ放題でした」。こう言うと、「うらやましい!」と思うかもしれませんが、正直、おいしくなかったです。それもそのはず、彼らがおかずにするのは、商品価値が低い、脂がのっていないマグロなのです。私はそんなマグロを口にして、「マズイですね」と言ったところ、漁師から、「文句、言うな」と叱られました。「買い出しに行くこともできない漁船で、そんなワガママは言えないんだな」と気づき、謝ると、「そげーなことやらではねぇ」と言われました。
残酷なのですが、獲ったマグロは、生きたまま内臓を抜き取られます。その時、心臓はまだドクドクと力強く脈打っています。「マグロの立場で考えれば、ひどい殺され方をした上、平気な顔をして『マズイ』と言われたらうかばれない」と言うのです。
つまり、「目の前に表れた結果だけで評価をすると、『全体』や『本質』を捉えきれず、間違えた発言をしてしまう」と注意されたのでした。この場合、「確かに味は悪い。でも、残酷な殺され方をして、私の栄養になってくれた」と捉えれば、最初に出る言葉は『感謝』であるべきでしょう。彼らは、そんな態度を仲間たちにも向けます。つまり、基本的に、「ありがとう」という言葉を多く使っていたのです。
これを『家族』で置き換えてみましょう。
育児中のママがいます。ママが家事を頑張っても、子どもは散らかすものです。よって完璧にはできません。帰宅した夫が、「掃除ができていない!おまけに料理が冷めてる」と文句を言ったら、ママは怒るはずです。夫のこうした言動が家庭不和につながるのは明らかです。
確かに、仕事に出ている夫からは、日中、家事を頑張るママの様子は見えません。でも、『見えない努力』に、まず感謝すべきなのです。その上で、どうしても指摘したいことがあれば、お願いをする程度にするのが、家族が幸せにいられる秘訣だと思うのです。
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