連載コーナー
本音のエッセイ

2022年6月掲載

新たな取材のテーマ

丸山ゴンザレスさん/ジャーナリスト

丸山ゴンザレスさん/ジャーナリスト
國學院大學大学院修了後、出版社勤務を経て独立。TV番組『クレイジージャーニー』では世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩く“危険地帯ジャーナリスト”として出演。著書は『アジア「罰当たり」旅行』、『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』等多数。

この2年、取材のテーマを考え続けている。

外国のスラム街、麻薬取引、ギャングなどを取材してきたジャーナリスト稼業の私としては、コロナ禍で海外渡航が制限された時間は考えるぐらいしかすることがなかった。そういう意味で、新たな取材のテーマこそが今の私の本音なのだと思う。

では、どんなことを考えてきたのか。

これまでに追いかけてきたのは、違法とわかっていながらリスクの高い取引に手を出す人たちから読み解いた「人間の欲望」や「アングラビジネスの仕組み」である。日本で取材活動をするためには、ここに新たな視点を加える必要がある。柔軟に対応しようと思っても、現実問題として価値観や文化、商習慣や法律、税制も違う日本に海外のことをそのまま当てはめてもフィットしない。

なかなか答えが出ないままだったが、思わぬところに解決のヒントがあった。転機となったのは、コロナ禍でスタートしたYouTube「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」である。

コンテンツとしては、日本国内を中心にしたゲストへのインタビューで構成している。これまでに元ヤクザ、半グレ、詐欺師、闇金などわかりやすいアングラ系の他に犯罪被害者、元薬物中毒者とか、元警察官、元刑務官、漫画家、映画監督、翻訳家などなど、普段あまり話を聞けないような人たちもゲストに来ていただいている。いずれも社会を裏側から見るのに最適なエピソードを聞かせてくれた人たちばかりだ。

そんなゲストの中に変わった物件に投資する富沢ウメ男さんがいた。彼から興味深い不動産の裏側を教えてもらった。細かい物件情報は動画を見てもらいたいが、物件ごとにストーリーがあって、時には法律との矛盾を包含して成立している物件もあるのだ。

さて、前振りが長くなったが、これからやろうとしている新たな取材のテーマは「不動産」である。

意外かもしれないが想像してみてほしい。どんな場所でも人は「暮らす」のだ。そこには家が必要で、家はどこの国でも安い買い物ではない。

しかも物件に対する価値は、国や都市、国民性によって大きく差が出る。

日本だったら駅から近いとか、郊外エリアがいいとかなんとなくの共通した人気条件がある。それが、国によっては治安が悪くなるので大通りから奥には入りたくないとか、同じ理由で駅近くは敬遠されたりする。事故(瑕疵)物件なんかも「気にしない」国民性のところもあれば、日本のように嫌がる人が多いところもある。そんな感じで割と面白いのではないかと思っている。

何より生活の場である住居はこれまでの取材で得たアングラビジネスでの知見がプラスされることになると思っている。どこの世界であっても悪い奴らは必ず不動産を狙うからである。その理由は経済的なメリットだけではなく、自分たちの勢力の誇示などさまざまだ。

いずれにせよ、この先、世界の不動産を見ていこうと思う。これが2年間日本にとどまり模索した私の現在の本音である。

(無断転載禁ず)

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