連載コーナー
本音のエッセイ

2021年6月掲載

発酵食品は体に良いけどクスリではない

小倉 ヒラクさん/発酵デザイナー

小倉 ヒラクさん/発酵デザイナー
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し全国の醸造家や研究者たちとさまざまなプロジェクトを展開。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。2020年、下北沢に『発酵デパートメント』オープン。

最近あちこちから「発酵食品は健康にいいんでしょ?」と聞かれる。新型コロナウイルスの不安もあって、発酵に免疫力向上はじめ疾病予防などさまざまな期待がかけられているらしい。

でもちょっと待って、発酵食品はクスリじゃないから!

お味噌汁や納豆を口にすればたちまち病気が治るわけではない。発酵食品はクスリと違って特定の症状を抑えるために発明されたわけではなく、あくまで日々の食事として存在してきたものだ。

発酵は元々食料の保存技術が発展して生まれたものだ。ある季節に集中的にとれる作物や魚を余さず活用するために、塩漬けにしたり干したりしているうちに、塩や灰に強い微生物が分解作用を起こし、原料にはなかった栄養成分をつくりだす。それがおいしいので、習慣的に食べるようにしたらどうやら健康効果があるらしい…という成り立ちなのだ。

ここ数十年の生物学や有機化学の発達により、現代の技術を使って伝統的な発酵食品を分析してみる。すると麹には消化促進作用が、納豆には血圧の調整機能が、漬物やヨーグルトなどには乳酸菌による免疫機能への好影響が…とさまざまな機能が発見され始めている。

しかし、この機能は医薬品に期待されるような劇的な効果はなく、麹だけ、納豆だけ、ヨーグルトだけ食べ続けても意味がない。

メディアやCMで「免疫力アップ!」という表現をよく見かけるが、握力や火力などのように強弱がすぐに測れる免疫「力」は存在しない。例えば病原菌センサーや寄生虫センサーなど、複数の免疫機能がバランスを均衡させながら健康を保っているのが人間の免疫だ。もし特定の免疫機能「だけ」が強くなると、免疫のバランスが崩れて病気になってしまう。大事なのは「力」ではなくて「バランス」なのだ。

免疫と同様に、食養生もバランスが大事だ。ヨーグルトが健康にいい!とテレビで見たからといってヨーグルトだけ食べていても栄養失調になる。お味噌汁や納豆やお漬物、肉も魚も多様な食材を組み合わせて健康な食生活を送ってほしい(と書くと当たり前のようなのだが、当たり前は地味でも価値がある)。

もちろん食生活「だけ」健全であっても、過労や人間関係に悩むことでやっぱり体調を崩してしまう。免疫と同じく特定の要素だけに偏ってはいけない。発酵食品は万能薬ではないので、期待しすぎないように!

最後にちょっとアドバイス。僕は朝食にまとめて発酵食品を摂るようにしている。お味噌汁、納豆、お漬物(キムチでも)の組み合わせは体も温まるし、毎日食べても飽きない。クスリじゃないぶん副作用もないので、楽しく習慣化して長い目で見て、バランス良く健康に生きようじゃありませんか。

(無断転載禁ず)

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