東大出身プロが伝える麻雀のおもしろさ
- 須田 良規さん/プロ雀士
- 東京大学工学部卒業。日本プロ麻雀協会A1リーグ所属。プロ雀士として活躍する傍ら、コラム執筆、麻雀漫画のストーリーや闘牌シーン原作、麻雀番組の解説など幅広いメディア活動を行っている。著書に『東大を出たけれど』『東大流 麻雀実戦名手‐神品‐』等。
私は麻雀プロという東大の卒業生としては異色の経歴を持っています。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在はMリーグという、企業がスポンサーのプロリーグがあり、その在籍選手は30名ほどです。私は彼らMリーガーとは異なり、一般社団法人の麻雀プロ団体というものに所属し、年会費を払ってリーグ戦に参加しています。
Mリーガーには年俸が保証されますが、私たちは対局による収入というものはほとんどありません。それぞれが、麻雀店に勤務したり、戦術書やコラムの執筆、麻雀漫画の原作や麻雀教室の講師という形で口に糊しています。そうした「Mリーガーではない麻雀プロ」が、全国に2000人以上はいると思われます。Mリーグができたのも3年くらい前の話で、それまで私たち全員が、手弁当で麻雀の普及に努め、戦術の研究・考察に取り組んできたのです。
とはいえその2000人全員が年俸のある夢のようなMリーグを目指しているかというと、決してそんなことはないと思います。ただ単に、麻雀が何よりも好きだから続けているという人間がほとんどかもしれません。
私は大学生のときに友人に麻雀を教わり、ひとりで麻雀店に行くようになりました。麻雀店では、見知らぬ4人で一つのゲームを行うんですよ。老若男女、さまざまな人がいます。私は当時20歳そこそこの若造で、世間のことを全く分かっていませんでした。いろんな生活をしていて、いろんな性格の人がいる。どのようなことで笑い、怒るのか。厳しい人も、優しい人もいます。しかし、それがその人の本質ではないことも分かります。優しい悪人も間違いなくいるのです。
見知らぬ人と勝ち負けを競うゲームで、何を疑い、何を信じればいいか。自分の人生にこの人はどのように関わってくるのか。その中で自分はどのような立ち居振る舞いをすれば居心地が良くなるのか。そのようなことを私は、麻雀を通じて学んできました。私は麻雀プロになって、麻雀店の群像劇を描くエッセイや漫画原作を書くようになりました。麻雀が好きな人というのは、結局のところ人間が好きなのかもしれません。
運不運がかなり介在するゲームです。複雑ですが、誰だって上級者に勝てることがあります。楽しいことも悔しいことも、何十年やっても混在するのです。
「そんな理不尽なゲームを、なんでアンタもやってんだい?まあまあ一緒に楽しもうか」と、初めて会う同士でも興味を持ってしまう。たとえMリーガーではなくとも、そんな麻雀のおもしろさを伝えていくために、私たちはいるのです。
(無断転載禁ず)