「ダラダラせずにお眠りなさい」
- 友野 なおさん/睡眠コンサルタント
- 自身が睡眠を改善したことにより、15kg以上のダイエットや体質改善に成功した経験から、科学的に睡眠を学んだのち、全国に快眠メソッドを伝授。テレビ・ラジオ・執筆など、多方面で睡眠のスペシャリストとして活躍中。『眠れないあなたを救う「睡眠ファースト」』(主婦の友社)等著書多数。
世界の中で一番睡眠時間が短い日本。コロナ禍では、ただでさえ眠らない日本人がさらに眠れぬ日本人になっている。先行き見えない不安、日中の活動量の低下、ストレスなど、不眠に陥る理由は多岐にわたるが、注目したいのが「生活リズムの乱れ」だ。
睡眠不足になる原因の一つに通勤時間がある。コロナの影響で日々のワークがリモートに切り替わった人も少なくない。すると、通勤時間分の時間的ゆとりが出て、睡眠時間も確保しやすくなるのではと思うが、そうはいかない。「出社時間が決まっていないとつい夜更かししてしまう」「自宅で仕事しているとダラダラして生活リズムが乱れてかえって眠れなくなった」など、2月以降何度耳にしただろう。
実際に、育児や介護が重なり「忙しくて十分な睡眠時間がとれない人」はいるが、「忙しい」のほとんどが言い訳のケースが多い。「なんとなく」スマホを見ていたり、「なんとなく」ネットサーフィンしていたり。この「なんとなく」過ごす時間のために削られるのはいつも睡眠時間である。睡眠を疎かにすることで心や身体、脳、行動などに悪影響が出ることはこれまで多くの研究が明らかにしてきた。ダメージが及んでいる実感のないままに無理な生活を続けると、ボディブローのようにジワジワと健康が蝕(むしば)まれ、ある日とり返しのつかないことになりかねない。
特に親として知っておきたいのは、親の睡眠習慣が子どもに影響する点だ。睡眠は子どもの発育にダイレクトに関わる。三角形の模写は通常5歳の課題としては妥当なレベルであると考えられているが、睡眠・覚醒のリズムが乱れている幼児は正常な幼児と比べて約6倍も三角形の模写ができなかった。
また、子どもの「理由のない攻撃性」「無表情」などの情緒面の問題や、「机に肘をついて身体を支える」「体操座りが長続きしない」などの姿勢、集中力、持続力、理解力に欠けるという問題、こだわりが強く人の気持ちに無関心などの問題との関連性も指摘されている。
さらに、幼少期の睡眠は将来のうつ病や肥満、成績などにも影響し、その子どもの人生を左右するものとなることが分かっている。
まずは睡眠時間を決め、そこから逆算して入浴時間、食事の時間、仕事終わりの時間など大まかなタイムスケジュールを組むこと、そして「やらないことリスト」をつくることも重要である。現代においては、23時以降はスマホを触らない、30分以上ダラダラネットサーフィンしないなどのデジタルデトックス項目はぜひこのリストに加えたほうが良いだろう。
自分の健康のため、子どもの健やかな成長のため、家族の明るい未来のため、家にいる時間が長くなった今だからこそ、日々の睡眠を大切にすることを意識したい。
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