連載コーナー
本音のエッセイ

2019年12月掲載

モヤモヤしている東京2020問題

軍地 彩弓さん/編集者

軍地 彩弓さん/編集者
クリエイティブ・ディレクターとして、「VOGUE GIRL」の創刊運営に携わり、2014年には自身の会社である、株式会社gumi-gumiを設立。雑誌「Numero TOKYO」のエディトリアルアドバイザーからドラマのファッション監修、情報番組のコメンテーターまで、幅広く活躍。

外苑西通りを千駄ヶ谷に向かうと、突然視界が広がって目の前に現れる、新国立競技場。隈研吾建築らしい白木の庇には植栽も入り、12月末に予定されるこけら落しイベントに向かって着々と準備が進んでいます。そう、もう来年。東京オリンピック開催まであと数カ月になりました。周囲ではチケットが取れた、取れないなどの話題が盛り上がり、テレビやWEBメディアもオリンピック関連の特集なども増えている中、実のところ私自身はモヤモヤしております。

このオリンピック、大丈夫なのかなーと。

周りの10代、20代に聞いても、全く盛り上がっていません。「今年猛暑だったのに、来年大丈夫? 開催期間は、都内は混雑するし、ブラックなボランティアに参加したくないし、日本脱出しちゃいたい」と。

先日決定になったマラソン開催地の札幌移転、お台場の海水の水質の悪さやら、元を正せば国立競技場の入札問題やらエンブレム問題やらボランティアユニフォーム問題等々。老害(?)への忖度ばかりが耳に入ってくる状況で、当初8000億と言われていた予算が3兆円までに膨らんでいること。「???」なことだらけです。

前回の東京オリンピックの年、私は生まれました。新幹線が開通し、首都高速もでき、「いだてん」に描かれる様に日本中が盛り上がった1964年。高度成長の日本を背景に、オリンピックは街を近代化し、その後の日本の経済成長も含めて、それは若者のオリンピックだったのだと思います。

21世紀になった今、今回の東京オリンピックがこの街に必要だったのか? その評価は開催が終わったアフターオリンピックの東京がどうなっているのか、にかかっています。大会ビジョンに謳われている「多様性と調和」も、今の東京は工事だらけでとてもバリアフリーが進んでいるようには見えません。人口減少、老齢化、低消費時代の2020年以降の日本にとって、必要なグランドデザインになっているのでしょうか?

そして、酷暑で行われるこの大会、何よりも世界から集まってくるオリンピック選手たちにとって、ベスト環境になるのだろうか? モヤモヤは尽きません。

私自身はパラリンピックに期待をしております。最先端テクノロジーが作るギアを身につけたハイパーなパラ選手たちの活躍は、特に陸上などでは通常のオリンピック記録を抜くかもしれません。テクノロジーとスポーツが新たな人間の未来を作る、そういう意味ではこの東京オリンピックはエポックメーキングな大会になりそうです。英語では“the Challenged”と表現するパラリンピック選手たちが、まさに新たなチャレンジをする。その目撃者になれることを楽しみにしております。 

(無断転載禁ず)

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