連載コーナー
本音のエッセイ

2017年7月掲載

ごはんを一緒に食べられる回数は有限

滝村 雅晴さん/パパ料理研究家

滝村 雅晴さん/パパ料理研究家
1970年京都府生まれ。パパ料理・親子料理で、家族の食育・共食と健康作り、ワークライフバランスを広める、日本で唯一のパパ料理研究家。株式会社ビストロパパ 代表取締役。料理教室やセミナー講師、NHK『きょうの料理』の出演などパパ料理の啓発活動を行う。

13年前に長女の誕生をきっかけに私は料理を作るようになった。2年後次女も生まれ、子どもたちの成長を喜びながら、家族4人で幸せに食卓を囲んでいた。そんな家庭を増やしたいと感じるようになり、父親が家族のために料理をする世の中作りのために「パパ料理研究家」として独立起業した。

娘たちとおそろいのエプロンを身に着けキッチンに立ち日常料理をしながら、一緒に撮影や取材も受けた。パパと子どもで料理をするお父さんを増やしたかった。長女は、僕の仕事を手伝うのが好きで、いつも付き合ってくれた。

順調に活動をしていた矢先に、長女に難病が見つかった。突然のことで、夢と現実の違いが分からなくなった。必死に病と闘うが、急速に症状は悪くなり、自分で歩く、食べる、話すことができなくなる。10カ月後、病院に入院してからひと月の間、点滴で生きた。いくらでも料理を作ってあげられるのに目の前の娘は、私の作ったごはんを食べることはできなかった。長女は、1年もたたず、わずか8歳8カ月で天国へと旅立った。

ごはんを作ってもらうことはうれしいこと。でも、作ったごはんを食べてくれる相手がいることは、もっともっと幸せなことだと娘が教えてくれた。家族4人で食事をしていたことも、当たり前ではなく、奇跡だった。

何気なく、毎日ごはんが食べられることは、当たり前ではない。手を動かし食べ物を自分の口に運び、固いものもしっかりかんで飲み込むことも、自分が健康だからできること。仕事で残業、付き合いで外食、親の介護で付きっきり、子どもが病気で入院となれば、家族全員がそろって食事をするのは当たり前ではない。

家族一緒に食事ができる回数は有限だ。いつでも食事ぐらい、できると思っていたら、限られた回数がどんどん減っていくだけ。食べることは生きること。共に食事をするということは、家族で生きること。1回の共食の積み重ねで、わが家はできている。何が一番大切なことか、優先しないといけないことか、長女が教えてくれた。

いろんな事情で時間がとれず、家族が食卓を囲むことができないこともあるだろう。けれど、食べられなかったとしても、食べられる回数が有限だと分かっていれば、一度の食事を大切にするし、早く帰る努力をするようにもなる。心の中で一緒に「いただきます」と言えばいい。そして「ごちそうさま」の数だけ笑顔も増える。その思いは、必ず親から子に伝わり、未来のこの国を作っていくことになると信じている。

(無断転載禁ず)

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