連載コーナー
本音のエッセイ

2016年12月掲載

片づけは誤解されやすい

すはら ひろこさん/整理収納アドバイザー

すはら ひろこさん/整理収納アドバイザー
共働き経験と建築・インテリアの資格を生かした片づけ術が、「無理なくできる」と幅広い年代に支持されている。メディア出演のほか各地でセミナーを開催。新聞とAll Aboutでの連載をはじめ、『風通しのいい片づけ』(エクスナレッジ)など書籍多数。

「モノが少ないのでしょうね」「いつも片づいていてうらやましい」。整理収納の仕事をしていると、必ず同じことを言われる。さらに「うちには気軽に呼べないわ」と言って、距離を置く人がいるかと思えば、反対に「捨てられなくて困っているの。片づけ方を教えて」と目を輝かせる人も。

わが家は決してモノが少ないとは言えないし、散らかるときもある。忙しくて疲れていると郵便物がたまったり、洗濯待ちの衣類が山になったりする。それでも自分なりに許容できる限界を超えるほど、手が付けられなくなることはない。片づいた状態かどうかは主観的なことなので個人差があると思う。家族と暮らしていれば、「キレイ」「気持ちいい」と感じる物差しに違いがあるから、そのことが家族のトラブルのもとになる。片づける方法自体は決して難しくない。やろうと思えば誰にでもできるけれど、片づいたと感じる状態のイメージを他の人と共有するのが難しい。

片づけの書籍や雑誌、ブログなどを見て目標にしている人が増えている。取材のためにブロガーさん宅を訪れると、確かに整然と暮らしている。それでも取材の依頼から訪問日までの間に、撮影に耐えられる状態に整えているというのが実情。さらにカメラの構図からモノを外して撮影する場合もある。読者が期待している部屋になるように、作りこみをするのが普通のこと。しかも写真は一瞬を切り取った断片にすぎない。日常生活というのは刻々と変化するわけで、何もないソファの上に脱いだ服が放置される時間もある。そうした一場面が紹介されることがないから、いつもスッキリしているという誤解につながる。

「片づけなきゃ」と思いながら作業をしていると目先のことにとらわれて、その先を長い目で見ることができなくなってしまう。そもそも片づけは何のためにやっているのか?散らかっているから片づけるのではない。「探し物をしない」「余分な買い物をなくす」といった実利的な要素もあれば、「素敵なインテリアに」「部屋を心地よく」して、より良い暮らしにつなげたいという向上心が動機になることもある。

100点の日もあれば60点のときもある。片づけと散らかりを繰り返す日々で一喜一憂することがあっても、これからの暮らしをイメージして気持ちに余裕をもって取り組みたい。家庭の平和を乱すことなく、家族とうまくやっていける方法を見つけることも忘れずに。そう願って今日もわが家を片づけている。

(無断転載禁ず)

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