連載コーナー
本音のエッセイ

2014年6月掲載

居住環境は脳を変える

澤口 俊之さん/脳科学者

澤口 俊之さん/脳科学者
1959年、東京都葛飾区生まれ。82年、北海道大学理学部生物学科卒業後、京都大学大学院理学研究科修士課程入学。同大学理学博士号取得。2006年人間性脳科学研究所・所長就任。11年9月より、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授兼任。

脳は無意識にもいろいろな情報を処理しているせいで、「居住環境」によっても相当な影響を受けます。脳に悪い環境、例えば、じめじめしてかび臭い環境に住んでいると、うつ病になりかねないほどです(こんなことは経験的に当たり前かもしれませんが、科学的に実証されています)。もちろん、脳に良い居住環境があります。そのポイントは光と香りです。

青空の下にいるとすがすがしい気分になるように、青っぽい光に囲まれていると、集中力や思考力が増します。勉強や仕事をするときには、青っぽい光を照明に使うと良いです。また、朝起きたときに青い光を見ると脳の日周リズムがリセットされて、リズムが適切になります。逆に、寝る前の青い光は厳禁。寝つきが悪くなり、睡眠が浅くなり、悪くすると睡眠障害になってしまいます。最近、子どもたちの睡眠障害が問題になっていますが、その一因は、寝る前にスマホの青っぽい画面を見ることにありますので、お子さんをお持ちの方は注意してください。寝る前に良いのは暖色系の明かり。オレンジ色っぽい暗めの照明です。ちなみに、暖色系の色、特に赤い色の食器を使うと食事量が無意識にも減るのでダイエットに効果的です。

香りも脳の状態を無意識にも変えます。有名なのは「フィトンチッド効果」というもので、森林浴の研究からきています。森林浴でリラックスできるのは、木々から出るフィトンチッドという物質の香りのせいです(ちなみに、森林浴などとの関係でたまに言われる「マイナスイオンがいい」という通説は明確な間違いです)。この香りはイグサからたくさん出るので、畳やゴザはストレス軽減に適当です。子どもでは、ゴザの上で試験をすると成績が上がる、というデータがありますから、お子さんをお持ちの方は子ども部屋に畳やゴザをひいてみてください。

集中力を高めるためには、シナモン系の香りが良いです。クルマの運転に疲れたときにシナモンの香りをかぐと運転が上手くなるというデータがあるほどですから、書斎や仕事部屋にはシナモン系の香りが良いかもしれません。寝室にはラベンダー。この香りは脳を落ち着かせ、睡眠の質を良くします。

夫などの男性パートナーと暮らしている女性は柑橘系の香り、とくにグレープフルーツの香りを使ってみてください。この種の香りは男性の脳に作用して、女性を若く、かつ、魅力的に見させる効果があります。脂肪の分解を促す効果も持つので、ダイエットにも期待できます。

光や香りの脳科学的データはまだたくさんありますが、ちょっとした工夫で、居住環境が脳に良いものになることは分かっていただけたと思います。皮膚感覚(椅子やテーブルなどの触感)や音なども、もちろん脳の状態を変えますが、そうした話はいつか機会があるときに、ということで。

なお、雑誌やネット上では非科学的な情報がかなり流布していますから(マイナスイオン効果がその例)、情報の科学的真偽を選別して適切な情報をピックアップする「癖」をつけてほしいと思います(ダイエットなどでも非科学的情報が多いです)。雑多な情報をそのまま受け入れていると脳が疲れ、老化が早まることも実証されていますし。

(無断転載禁ず)

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