連載コーナー
本音のエッセイ

2013年11月掲載

犬と人との絆

秋元 良平さん/写真家

秋元 良平さん/写真家
1955年岩手県生まれ。東京農業大学農学部畜産学科卒。新聞社写真部契約カメラマンを経て、フリーランスフォトグラファーの後、秋元良平写真事務所設立、現在に至る。自然、料理、人物、いきもの等、「いのち」&「こころ」をテーマに撮影を続けている。
HP:http://ryohei-akimoto.jp/

ライフワークとして12年間撮影した『盲導犬クイールの一生』(文藝春秋)の発刊により、この約10年間、皆さんに犬のカメラマンと認識されてきました。そして、多くのワンコたちをイベントなどで撮影させていただき、同時に犬と飼い主さんとの関係を知ることができました。

一昔前、私の子どものころは日本では庭先に犬小屋があり、鎖につながれ薄汚れた犬が「番犬」として飼われていて、そんな犬小屋の傍らの地面には犬が掘ったストレス発散の穴があったものです。また、多くの家では人の食事の残りご飯や味噌汁をアルマイトの使い古しの鍋などに入れて与えている風景も目にしました。

少し時代が進むとドッグフードという栄養食が現れ、多くの家庭で、この便利な代物を犬たちは食べることになるのです。しかし、添加物や不純物が入ったドッグフードで、私の家で飼っていた犬のように、がんで死んでいった犬は少なくありません。そんな悲しい状況も、近年は以前のように危ないドッグフードは少なくなり、安心できるナチュラルなドッグフードがほとんどになっています。室内で、家族同様に犬たちは安心安全な環境で暮らせるようになってきて、「幸せだなあ」と感じます。

50代の知り合いから聞いた言葉です。「実の母親が亡くなったときよりワンコが亡くなったときの方が悲しかった」。とてもショッキングな言葉でしたが、現代の犬との関係を表していると思います。それほど犬の存在は大きくなっているのです。犬は人間の「ことば」は話せませんが、一緒に暮らすことにより多くのことを理解していると感じます。語りかけた犬の「ひとみ」は輝き、潤んで、こちらの「こころ」を見つめ続けてくれます。共に暮らす家族の姿をいつも見つめ、遊んでくれることを、そして「かわいいね」となでてもらえるふれあいのときを待ち続けていて、「家族」の絆が結ばれています。

外出時のマナーも良くなってきて、排泄物の処理も皆さんスマートに行っている姿を多く見かけますし、犬をバッグに入れて電車でお出掛けする方も多くなりました。そして、犬の「存在」が人と人もつなげてくれます。人とのあいさつも少なくなっている近ごろですが、朝のお散歩で会った見ず知らずの犬の飼い主さん同士のあいさつと会話は弾みます。これもワンコが「こころ」をつなげてくれているのです。

そんな大切な存在にある犬ですが、裏腹な状況として、簡単に捨てられたり、無謀な繁殖の悲惨なニュースが後を絶ちません。彼らは何も悪いことをしていません。そのような状況を作るのは「人間」なのです。

オーストラリアでドッグシェルターをしている方の言葉を紹介します。

「人間が正しい行いをしているならば、私たちは必要ない。私たちが存在するのは、人としての責任をとらなければならないからだ」。動物に優しくできる「こころ」があれば、人にも優しくでき、いじめもなくなることでしょう。「こころ」と「いのち」の大切さをたくさんの子どもたちに感じてもらい、「いきもの」との「絆」に結ばれた幸せなときを過ごしながら、優しさに満ち足りて育ってほしいです。

(無断転載禁ず)

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