連載コーナー
本音のエッセイ

2013年9月掲載

江戸街歩きの楽しみ

安藤 優一郎さん/歴史学者

安藤 優一郎さん/歴史学者
1965年生まれ。歴史家。文学博士(早稲田大学)。JR東日本大人の休日・ジパング倶楽部趣味の会などで講師を勤める。主要著作に『不屈の人 黒田官兵衛』メディアファクトリー新書、『山本覚馬~知られざる幕末維新の先覚者』PHP文庫がある。

私は江戸をテーマとした執筆や講演活動を展開しているが、一番人気があるのは街歩きの講座だ。昨今、テレビではNHKの「ブラタモリ」が人気を博したように、街歩きの番組が数多く放映されている。街歩きを特集した雑誌や書籍も根強い人気がある。最近の健康ブームも追い風となっていることは間違いない。

もちろん、単に歩くことが目的ではない。何かのテーマを持って歩くわけだが、シニア世代を中心に歴史への関心が高まっている昨今、江戸は歩くための大きな動機になっていることを、私は日々実感している。

こうして、東京では近年の江戸ブームも相まって、江戸をテーマとした街歩きが大人気である。休日はもちろんのこと、平日でも江戸切絵図などを持って散歩する人々をここかしこで見掛ける。

さて、東京で江戸を探すとなると、隅田川沿いの浅草や深川といった下町が定番だ。浅草などは、日本人のみならず外国人の姿も日常的に見掛ける観光地だ。だが、都心にも江戸の名残りや面影が数多く残されていることはあまり気付かれていないのではないか。

江戸は戦災に遭ったこともあり、江戸以来の建造物はあまり残っていない。戦後の再開発で数多くの江戸以来の遺物が失われていったことも確かである。しかし、丹念に東京の街を歩いてみると、まだまだ貴重な遺産が保存されていることに気付く。

その象徴は、何といっても江戸城だろう。堀や石垣は江戸の遺産に他ならない。また、江戸城の周囲に広がっていた大名屋敷の名残りは各所で見つけられる。例えば、上野公園に行けば、鳥取藩池田家の屋敷の表門が保存されている。東京大学の本郷キャンパスに入れば、前田家が将軍の姫君を迎えるために造営した赤門が現存している。

たとえ、建物そのものは残っていなくても、町名や地名などの形でかつての姿を伝えていることは、実際に歩いてみればよく分かる。ほんの一例にすぎないが、港区虎ノ門などは江戸城の城門の一つである虎ノ門にちなんで命名された町名だ。

こうした江戸の遺産の由来を紐解いていけば、歴史的な好奇心がくすぐられるに違いない。そんな楽しみが味わえる街歩きを、ぜひお楽しみになってはいかがだろうか。

(無断転載禁ず)

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