連載コーナー
本音のエッセイ

2013年8月掲載

私にできること

佐野 有美さん/車椅子のアーティスト

佐野 有美さん/車椅子のアーティスト
1990年愛知県生まれ。先天性四肢欠損症で生まれ、あるのは短い左足と3本の指のみ。高校時代、チアリーディング部に所属し“車椅子のチアリーダー”として地元マスコミで話題となる。現在、テレビ・新聞などメディアの取材、多方面からの歌や講演依頼を受け、積極的に活動中。

私は両手と右足がなく、短い左足があるだけの身体で生まれました。先天性四肢欠損症という障がいです。このような体で何ができるの?と思われるかもしれませんが、左足の三本の指を使って、食事や文字を書くなど、できることはたくさんあります。今では付けまつげなどのメイクも自分でしています。ただし、トイレや入浴など自分の力だけではできないことも、もちろん多くあります。

過去を振り返ると、障がいを受け入れられず、「どうして私だけ?」と、運命を恨んだこともありました。また、私は人に支えてもらうことばかりで人のために何もできない、と思ったこともあります。そんな中、高校で出会った先生の叱咤から『私には手足がなくても声がある』と気付きました。

現在は、唯一自由になる声を生かし、全国各地で講演活動を行っています。

ある学校で講演をさせていただいたときのこと。ひとりの生徒からこんな質問をされました。「僕は発達の障がいを持っています。いつも周りの人に支えてもらって感謝していますが、まだまだ感謝しきれていないって思ってて。それにうまく相手に感謝の気持ちを伝えることができていないような気がして…。感謝の気持ちってどうしたら伝わりますか?」。その子が障がいを持っていることは、他の生徒は知らなかったそうです。言葉に詰まり、涙を流しながら、勇気を出して障がいを打ち明け、一生懸命に問い掛けてくれました。

感謝はただ「ありがとう」という言葉を相手に伝えることだけではなく、一番大切なのは「ありがとう」って心の底から感じること、気持ちが大事なのだと答えました。

講演後その子の手と私の足で、「お互いに頑張ろうね!」と熱く握手を交わした瞬間、“本当にありがとう”という気持ちが溢れてきました。そして、離れ際ににっこりと笑顔を見せてくれたときには、うれしくて仕方がありませんでした。

このやり取りから、この生徒の周りに対する感謝の気持ちの深さを思うと私も胸が熱くなり、「ありがとう」という言葉の根幹を思い知らされました。

感謝は笑顔を生みます。そして支え合いや絆が芽生える。障がいがあってもなくても関係なく、誰かのために自分ができることは必ずあるのだ、と。

私も「自由に使えるこの声で人の力になりたい!」という願いが叶い、音楽活動もさせていただけるようになりました。キラキラ輝く毎日になるよう精一杯自らの力を発揮していきます。これからも皆さまから頂いた、たくさんのメッセージを胸に、言葉や歌を通して活動をしていきたいと思います。

(無断転載禁ず)

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