連載コーナー
本音のエッセイ

2012年11月掲載

あなたが いてくれて 良かった 一日一生

やんちゃ和尚さん/浄土宗・西居院第21代住職

やんちゃ和尚さん/浄土宗・西居院第21代住職
本名は廣中邦充(ひろなかくにみつ)。1950年愛知県生まれ。大正大学仏教学部卒業。非行少年や引きこもりの子どもたちを無償で寺に預かり、子どもたちを社会復帰させる活動を続ける。「平成の駆け込み寺」として巣立っていった子どもたちは800人以上。著書に『やんちゃ和尚』など多数。

今年6月末にお医者さんから「悪性の肺ガン。ステージ4」との告知を受けました。まさに青天の霹靂でした。そのとき、先生が「一緒に頑張りましょう」と握手を求めてきてくれました。不安と怖さでいっぱい、その先生の握手が、私にとって大きな安心感を生み、この先生にお任せしようと、この夏3カ月、愛知県の藤田保険衛生大学病院での抗がん剤治療による闘病生活に入っていました。

「明日はどうなるか分からない命、死が刻々と近づいてくる、不安な日々。副作用におびえる日々、少しの体の変化に不安になる日々」。そんなとき、いつも、ふと気がつけば傍らに寄り添うように看護師さんがいてくれました。

先生も毎日のように病室を訪れては、そっと握手をして「今日、一日頑張りましょう」と。そんなとき「あなたがいてくれて本当に良かった」と思いました。また、そこに不安な心から安心感が生まれたのです。こうした想いになれるような人との関係を築くにはどうすればいいでしょうか?

それは「刻」をとらえ人とのであいを大切にすることだと思います。よく私は、「一日一生」と講演や法話の中で言います。それは一日一日を欣びの心で暮らし、「今日やるべきことを明日に延ばすなよ」ということです。その「刻」をとらえ、無駄にすることなく「臭いをかぎとって」生きていっていただきたいのです。また、「良きであい」にするには相手を99パーセント信頼することだと思います。残る1パーセントは盲信を避けるためです。そこに「絆」が生まれ、「安心感」が生まれます。

さて、私はあの東日本大震災の日から被災地にボランティアで何度も伺わせていただいております。

こんなであいがありました。避難所で暮らす4人家族の親子がいました。4人分、4パックのおにぎりが配られたのですが、その1人の子が「おじさん、僕の家は4人家族だけど3パックだけでいいよ。3パックを4人で分けて食べるから」と大声で言いました。この子どもの声に私も涙が止まらず、拍手を送りました。

こんな素晴らしい感動にであう欣びを感じることができました。であいの大切さを回りに、あなたがいてくれて良かったなあと感じる今日このごろです。

人と人とのであいの中から、韓国とであい、先日、日ごろの活動を紹介する本が韓国で出版されたばかりです。韓国の新聞での誌上相談の中でも、国は違えどであいがありました。そのであいが人々の想いを繋ぎ、新たな良きであいへと導いてくれるのだろうと思います。

(無断転載禁ず)

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