連載コーナー
本音のエッセイ

2012年4月掲載

日本酒で彩る日々の食卓

葉石 かおりさん/エッセイスト・きき酒師

葉石 かおりさん/エッセイスト・きき酒師
1966年生まれ。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て現職に。全国の酒蔵を巡り、エッセイを寄稿。「おひとりさま」ブームの立役者でもある。近著に『東北美酒らん』(角川書店)、『じじいリテラシー』(星海社)など。

今、日本酒がおもしろい。日本酒と聞くと、悪酔いする酒、オジサマの飲み物というイメージを抱く方が多いが、それはとうに昔のこと。21世紀の日本酒は、おいしくなったのはもちろんのこと、バリエーションも豊かだ。日本酒の味が格段にアップしたのには、いくつか理由がある。まず挙がるのは醸造技術や機械の向上だ。日本酒は仕込む際に原料となる酒米を削る(磨くともいう)のだが、この精米の技術革新がすごい。かつては50%がせいぜいだったが、今は精米歩合8%、つまり米の92%を削り取ってしまうことも可能となった。米を多く削ると、日本酒の味はどうなるかというと、〝雑味のない透明感にあふれたフルーティな味〟になる。実際、こうした酒を日本酒ビギナーの女性に飲んでもらうと、十中八九「日本酒って、こんなにおいしかったんですね」と驚く。

こうしたハード面に加え、蔵元の若返りもまた味に大きな影響を与えている。雑誌などで紹介される話題の日本酒の蔵元は、30~40代が中心。彼等の多くは東京や海外で働いた経験があり、考え方も柔軟だ。古きを大事にしながらも固執はせず、現代の感覚をもって酒造りを行う。和食に限らず、さまざまな料理に合うようになったのは、いい意味で日本酒自体が現代化したからだ。

とにもかくにも、今まで以上においしさを極めた日本酒を飲まない手はない。定番的におちょこで飲むのもいいが、ここでおすすめしたいのがワイングラス。いい日本酒ほどワイングラスで飲んでほしい。これにはキチンとした裏付けもある。人の舌は先端は甘味、両脇は酸味といった具合に、場所によって感じる味覚が違う。おちょこのように口径が小さいと甘味ばかりを強く感じるが、口径の広いワイングラスだと舌全体に酒が広がるため、瞬時に五味を味わうことができる。つまり酒本来の味を正確に味わえるというワケ。試しに同じ日本酒を、おちょことワイングラスで試してみるといい。味の違いにがくぜんとするはずだ。

日本酒のお供にピッタリなのがチーズ。意外と思うかもしれないが、チーズと日本酒はどちらも発酵食品とあって、非常によく合う。クリームチーズに、ホンの少々、酒盗を添えると、これまた絶品。グラスがすぐに空になる。

ワイングラスで日本酒を飲みながら、チーズをつまみに1杯。こんな飲み方、ちょっと前では考えつかなかったはず。次世代蔵元が醸したニューウエーブの日本酒を試さない手はない。今宵、早速、お気に入りの日本酒で乾杯してはいかがだろうか?

(無断転載禁ず)

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