連載コーナー
本音のエッセイ

2012年1月掲載

「ふれあいコンサート」に関わって28年

鳥塚 しげきさん/歌手

鳥塚 しげきさん/歌手
1947年東京生まれ。立教大学在学中の1966年にザ・ワイルドワンズのメンバーとしてデビューし、数多くのヒット曲を世に送り出す。バンド活動以外では全国の特別支援学校を訪問する「ふれあいコンサート」を展開。2006年11月にはザ・ワイルドワンズ結成40周年記念コンサートを日本武道館で行った。

1977年ごろからNHK教育TVの歌のお兄さんとして、子どもの音楽に関わる活動を始めました。番組のために書いた曲を集めたLPを発表し、それに伴った子ども向けのコンサートも全国各地で開催しました。そのコンサートに障がいを持つ子どもたちが多く参加するようになり、障がい者向けの「ふれあいコンサート」が誕生したのです。

しかし、クルマ椅子で移動しなければならない子や寝たきりの子など、さまざまな障がいを持つ子どもたちにコンサート会場まで来てもらうのは、とても困難なことです。そこで、その子たちが通う特別支援学校に赴き、コンサートをすることにしたのです。

私はこのコンサートを始めるにあたり、いろいろ考えました。<1>通常のコンサートと同じレベルの音響システムを使用する。<2>絵などを多数使用し、たとえ音が聴こえにくくても、見るだけで楽しい内容にする。<3>子どもたちはただ見ているだけでなく、参加できるようにする。<4>そのためには、今までの音楽活動で習得した全てのノウハウを投入する。など、さまざまな準備をして、1983年、秋田の特別支援学校で第1回「ふれあいコンサート」は開催されました。

学校の体育館にセットされたスピーカーから、普段とは違う音圧や音質で聞こえてくる、アニメの歌やヒットソングの数々に、子どもたちは興奮し、大勢の子が踊り出し、コンサートは大成功でした。

その日以来、毎年4~5校の学校を訪問してコンサートをしており、2011年で121校に達しております。この28年間、現場でさまざまな体験をしました。「ふれあいコンサート」のために書いた曲の中に、『どんな声?』という曲があります。私が「犬の鳴き声どんな声?」と歌って、子どもたちに「ワンワン」と答えてもらうのです。「前に出てきて鳴き真似したい人?」と問いかけると、毎回40人くらいの子どもがステージに上がってきます。筋肉に障がいがあって、スムーズに話せない子が一生懸命「ウウワン、ウウワン」と表現する姿に大きな感動を覚えます。「ウサギの鳴き声をやりたい」という子は必ず「ピョン、ピョン」と鳴いて、先生方や父兄の方々を喜ばせます。いつもは動こうとしない手足の短い女の子が、ハイハイしながら歌っている私に向かってきたり、など。私が繰り出す音楽に、何かを感じた子どもたちが、日ごろ見せない表情や行動を起こすのです。

このコンサートで子どもたちにふれあう度に、音楽の持つ素晴らしい力を強く実感します。「ふれあいコンサート」は私のライフワークです。

(無断転載禁ず)

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