フレンチ・パラドックス
- ドラ・トーザンさん/国際ジャーナリスト・エッセイスト
- ソルボンヌ大学卒、パリ政治学院卒業。東京日仏学院、アカデミー・デュ・ヴァンなどで講師を務めながら、新聞、雑誌への執筆や、講演など各方面で活躍中。2011年1~3月、NHKラジオ『まいにちフランス語』応用編(木・金曜)に講師として登場予定。小学館より新書『フレンチ・パラドックス(仮)』発行予定。
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9月にフランスから東京に戻ってきてすぐ、今度新しく出る私の本の仕上げに取り掛かりました。今回の本のテーマはフレンチ・パラドックス。
フレンチ・パラドックスで有名なのは、赤ワインと心臓病。バターたっぷりの料理を食べているフランス人に、どうして心臓疾患が少ないのか?その理由は、赤ワインに含まれているポリフェノールにあるという説です。おいしいものを食べて長生きする、これはフランス人にとって当然のこと。ワイン好きの私にとっては、とてもうれしい説なんです。「フランスでは結婚するカップルがどんどん減っているのに、どうして出生率はヨーロッパでナンバー1なの?」、「フランス人はバカンスをたくさんとるのに、なぜ経済大国でいられるの?」。一見不思議に見えるこうした現象。日本でもたびたび質問されます。これらを新・フレンチ・パラドックスとして、フランス人のライフスタイルや価値観などを紹介しながら、本で解説しています。
たとえば少子化対策について。日本ではお役所が「お見合いパーティー」を催したり、「婚活」なんて言葉が流行ったりと、結婚する人を増やすことに力を入れているようですが、フランス人から見るとちょっとヘン。じつはフランスで生まれる赤ちゃんの半数は婚外子。結婚していないカップルから生まれているのです。法的なことはもちろん、差別はまったくありません。それに、育児休業中もポストは保証されますから、出産はキャリアの邪魔になりません。ですから、フランスの女性は仕事を続けながらママにもなれるのです。保育施設などの子育て支援も充実しています。女性たちが人生を自由に選択できる国、それを目指してフランスの女性たちは戦い、そして議論を深めながら勝ち取ってきました。自分の人生を愛し、楽しむこと…。フランス人のArt de Vivre(心豊かに暮らす)の精神を大切にする国柄だからこそ、こうしたすてきなフレンチ・パラドックスが実現したのではないでしょうか。
少子高齢化を迎え、経済も成熟期にある日本が、そんなフランスに注目し始めています。私の大好きな日本が、もっと人生を楽しめる国になれるよう、これからもお手伝いしていくつもりです。
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