連載コーナー
本音のエッセイ

2010年5月掲載

役者がいない日本

米山 公啓さん/医師・評論家・タレント

米山 公啓さん/医師・評論家・タレント
1952年、山梨県生まれ。愛知県、東京都にて育つ。聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業。神経内科を専門とする。1998年より、東京都あきる野市の米山医院で医師としての仕事を続けつつ、作家活動を行う。著作はエッセイ、医学ミステリー、医学実用書など230冊を超える。

アメリカのテレビドラマは、いまやハリウッド映画より面白いかもしれない。何といっても脚本がすばらしい。

少し前なら「24」「LOST」「ヒーローズ」と、人気作品が目白押しだった。視聴率が良ければ、同じシリーズの新作を毎年つくるので、ヒットさせれば、10年くらい製作会社も俳優も食べていける。だから、見る側を飽きさせない斬新性を求めていくのだろう。ただそれを支えるのは、何といっても役者の演技力である。その存在感は、まるで本当にこういう悪者がいるんじゃないかと思わせる。無名の役者が新しいドラマに出演して、次々に有名になっていくシステムは、アメリカの役者層の厚さを痛感する。

それに比べて、日本のテレビドラマはどうなっているのだろうか。

NHKの大河ドラマなど、むしろ無名の役者を発掘する場にすべきだと思うが、歌手やタレントという、最初から知名度のある人を役者として使うので、無名の役者が有名になっていく場をつくり出せていない。視聴率優先だと、大きくはずせないので冒険ができないのだろう。日本には役者をきちんと育てる大学がないので、日本の役者層は薄く、映画俳優でありながら、テレビCMやテレビドラマにも出演してしまう。そのために、日常のテレビに出すぎることになり、役者としての新鮮みが薄れていく。

まさに悪循環の繰り返しになって、相変わらず同じような役者が映画、テレビドラマに出ている。

新しいドラマそのものが、役者をつくり、育てていくというシステムのない日本では、結局ドラマ自体もつまらなくなってしまう。

アメリカなら英語圏であるから、DVDを世界中に販売できるという強みもあり、ドラマ自体に金のかけ方が違うので、単純に日本のドラマがダメだと言うのもおかしいかもしれない。

日本の音楽業界は、若い人たちが海外の音楽を聴かなくなって、日本人アーティストばかりになり、世代格差がより強くなって、最終的には日本の音楽マーケットが小さくなってしまった。ドラマや映画も同じように、国内だけのマーケット向けにつくっていれば、結局、日本人俳優の出演チャンスが減って、衰退していってしまうのではないだろうか。

それを救うのは、見る側の厳しい目と高い要求度しかないように思う。

(無断転載禁ず)

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