連載コーナー
本音のエッセイ

2009年9月掲載

「百の魚」を与えるより、「釣り針と釣り糸の使い方」、これが食育

服部 幸應さん/医学博士

服部 幸應さん/医学博士
(学)服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長。藍綬褒章およびフランス政府より国家功労勲章並びに農事功労勲章を受章。食育を通じた生活習慣病や地球環境保護の講演活動に精力的に取り組んでいる。著書に「食育の本」(ローカス)、「大人の食育」(NHK出版)など多数。

食育がだいぶ知られてきたようです。しかし、食育というと一般的には「親子料理教室」か「農業体験」ではないのかという答えが返ってきました。

平成17年7月15日に施行された「食育基本法」は、現在内閣府の「食育推進基本計画」(5カ年計画)の目標数値の75%ほど達成できてきたのですが、食育とは何かまでは一般的に知られていないような気がするのです。

そこで、食を通じた人間教育すなわち食育の本質に触れてみたいと思います。それには、親が大きな役目を果たすことになります。動物界を見てみると、親の役目は、一言で言うと、子どもを一人で生きていけるようにすることなのです。それは、地球上のすべての動物に当てはまります。

例えばライオンは、子どもが幼いうちは獲ってきたシマウマなどの肉を与えていますが、ある程度成長すると、母親は子どもを猟に連れて行きます。そこで狩りのテクニックを教え、自分でえさを確保できるようになると、親は子どもを一人前として扱い、親のテリトリーから追い出してしまいます。このように親が子どもを独り立ちできるように育てあげるのは、当然の本能であり、動物界では当たり前のことです。

ところが、今の家庭の中では、子どもを独り立ちさせるためのしつけができていない親が多いように思います。ライオンに例えると、えさは与えられても、獲り方をきちんと教えていないようなもの。これでは独り立ちできない若者が増えてくるのも当然で、自分一人では生きてゆけないのです。ニートやパラサイトシングルの増加も、これと関係しているのではないでしょうか。食卓で家族から教えられる一般常識こそが、その後の人生を決定付ける力になるはずです。

生きていく力は、時には厳しく、独り立ちするために必要な要素を身に付けさせなければなりません。それをないがしろにしてしまうと、後で教えようとしても修正がききません。幼いころからの習慣が一生を左右してしまうのです。まさに、これこそが「食育」です。日本の教育の3本柱「知育」・「道徳」・「体育」の基本として食育が不可欠な理由なのです。

社会という大海に、いずれ小舟を漕ぎ出す子どもに与えるべきは、魚ではなく、それを自分で獲るための釣り針と、釣り糸の使い方だということを、ぜひ知っていただきたいと思います。

これこそが家庭での親の役目であり、一般常識をわきまえた大人になるための教育。すなわち「食育」なのです。

(無断転載禁ず)

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