アフリカ“ポレポレ”
- 平岩 道夫さん/ケニア政府任命“観光親善大使”
- 1934年生まれ。日本初の切手評論家、海外旅行評論家、写真家、著述家として精力的に活躍。密猟防止のため、ケニアの動物保護官に400台の双眼鏡を寄付。マサイの子どもたちに娘と一緒に小学校と幼稚園をプレゼントするなどの活動も継続中。
私が初めてアフリカを訪れて、今年で37年目になる。雄大な自然と真剣に日々を生きる野生動物たち、そしてゆったりとした時の流れの中で暮らす現地の人々に魅せられて、今や“第2の故郷”となってしまったアフリカへの“里帰り”も、はや140回になろうとしている。
ところでひとくちにアフリカといっても、現地に何カ国あるのか、即答できる日本人はほとんどいないのが、実情だ。
アフリカには、現在53の国があるが、歴史、文化、気候、風土、習慣、言葉などは多種多様。
私が毎年定期的に訪問しているケニアは、アフリカ大陸の東側、インド洋に面した赤道直下の共和国。国土面積は日本のおよそ1.5倍。人口約3200万人で、42部族が暮らしている。公用語は英語とスワヒリ語だが、地方や家庭では、部族語も話されている。
日本人はなぜか「アフリカは暑い」という先入観を持つ人が少なくないが、ケニアの首都ナイロビは、海抜1700メートルの高原にあり、朝晩は上着が必要なほど気温が下がる。
国内にはマサイマラ、アンボセリ、ナクル湖、ツァボ、サンブルなど、世界的に有名な国立公園や保護区があり、オリもサクもない文字通りの“野生の王国” に、観光客である我々が“サファリカー”と呼ばれる車というオリに乗って、ゾウ、ライオン、チーター、サイ、カバなど野生動物の中に「お邪魔する」ことになる。
誰もが目を見張るのは、ビルが林立する街から数百キロ離れたサバンナ(草原)の真ん中に、快適で豪華な宿泊施設があることだ。
新鮮なケニアの野菜、果物、肉、魚を使った、おいしい料理がビュッフェスタイルで楽しめ、食後はこれまた特産の香り高い紅茶とコーヒー、左党には各種ケニア産ビールや、蒸留酒も見逃せない。
ところで、私が初めてケニアを訪れたときに教えられた忘れられない言葉がある。それはケニアの公用語、スワヒリ語で「ゆっくり、のんびり」という意味の言葉で、“ポレポレ”(Pole Pole)だ。
日本人はつい「忙しい」を口ぐせのように使う。電話でも、「お忙しいところ恐縮ですが…」と実際は思っていなくても使う。
忙しいという文字は“心を亡くす”と書くが、忙しいときこそ自分自身に「ゆっくり、落ちついて」と言い聞かせるべきだ、ということを、“ポレポレ”から教えられた。
以来、わが家ではどんなに忙しいときでも「忙しい」という言葉を使わないように決めた。「もう10分しかない」ではなく、「まだ10分ある」という発想で、心にゆとりを持って日々を送りたい、と心がけている。
充実した人生を楽しむためにも、何事もプラス思考でゆきたいものだ。
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