連載コーナー
本音のエッセイ

2008年3月掲載

なげださない

鎌田 實さん/医師・作家

鎌田 實さん/医師・作家
1948年東京生まれ。 1974年、東京医科歯科大学医学部を卒業。33年間、医師として地域医療に携わり、住民とともにつくる医療を提案・実践してきた。1991年、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)を設立。2004年、イラクへの支援を開始。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)理事長、日本・イラク・メディカルネット(JIM-NET)代表、東京医科歯科大学臨床教授、東海大学医学部非常勤教授。

今まで、「がんばらない」、「あきらめない」の2つのエッセイがベストセラーになり、西田敏行主演でテレビドラマにもなった。

今年の1月末、「なげださない」という本を書いた。この国のリーダーがこの国を投げ出しても、防衛省のトップがこの国を投げ出しても、ぼくたちはこの国が好きだから、この国をなげださない。なげださない人たちの感動的な生き方を描きたかった。涙なしでは読めない。泣きたい人はハンカチを用意して、ぜひ読んでください。

ぼくも、自分の夢をなげださないでやってきた。16年間、チェルノブイリの汚染地の子どもたちの命を支えるために、87回医師団を派遣し、約14億円の薬を送ってきた。3年前から、イラクの5つの小児病院へ毎月400万円の薬を届けている。

子どもたちのための薬代を稼ぐため、「がんばらない」レーベルというNPOを作った。カマタのプロデュースでつくった第1弾CD「ひまわり」が大ヒットを飛ばした。2万枚売れている。ジャズでは大変めずらしいらしい。第2弾CD「おむすび」を作った。ぼくのエッセイがもとになってジャズアルバムができた。

42才のスキルス胃がんのお母さんが、余命3ヶ月という宣告を受けた。しかし子どもの卒業式まで生きたいとお母さんは願った。子どものために生きたいという希望が、お母さんの免疫機能に影響を与えた。奇跡が起きた。

お母さんは卒業式まで生きた。不思議なことに、さらに1年、末っ子の卒業式まで生きた。2人の子どもたちはうれしかった。お母さんも、ぼくたちもうれしかった。余命3ヶ月の命が、1年8ヶ月生き、2人の子どもの卒業式を見届けることができた。

お母さんはときどき家に帰り、台所に立ち、子どもたちのお弁当を作った。最後にお母さんが作ってくれたお弁当は、おむすびだった。

久しぶりにお母さんが作ってくれたお弁当を持って学校へ行った。昼が待ち遠しかった。昼休みが来た。お弁当を広げると、うれしかったはずなのに、切なくて切なくて、なかなかおむすびに手が届かなかった。

このお母さんのおむすびがジャズになった。

ぜひ聞いてください。あなたの疲れた心が癒されます。そして病気の子どもたちの薬代になるのです。すべて利益はチェルノブイリやイラクの子どもたちの薬代になります。レコード店で坂田明の「ひまわり」、坂田明の「おむすび」と言っていただければ注文できます。直接の注文は、日本チェルノブイリ連帯基金 0263-46-4218。応援よろしくお願いいたします。

(無断転載禁ず)

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