連載コーナー
本音のエッセイ

2007年8月掲載

ボーイスカウト

金田 賢一さん/俳優

金田 賢一さん/俳優
1961年兵庫県で生まれる。1978年に映画『正午なり』でデビューし、その後ドラマ『太陽にほえろ!』のデューク刑事役として出演し人気を集めた。近年は単発ドラマで深みのある演技を披露している。さらに情報番組に多数出演し、2004年からテレビ神奈川お昼の情報番組『とっておき自由食感ハマランチョ』では月曜日・火曜日にMCとして出演。2006年NHK大河ドラマ「功名が辻」では田中吉政役、2007年NHK大河ドラマ「風林火山」では柿崎影家役で出演。

何故だかボーイスカウトのローバー隊(18才~25才が対象)の隊長をしている。娘しかいないのに…。まあ履歴からすればそれも当たり前のことなのかもしれないが…。

子どものころ、身体・精神の向上を望む私の親が近所のボーイスカウトに私を入れた。両親にしてみれば、安心して子どもを預けることのできる学校以外の環境ではベストの選択であったのだろう。(当時誘拐などの物騒な事件が多かったし、今のようにサッカーなどたくさんの選択肢はなかった)。

小学校、中学校とスカウト活動を楽しんだ。ボーイスカウトのカリキュラムの中では最高の菊スカウトにもなった。無我夢中…いや何も考えずにやっていた。子どもでしたから。

しかし齢を重ね、今の自分の根本、バックボーン、プリンシプル…さまざまな言い方があるが自分の考えの基であるのがスカウト活動であったと思う。小学校低学年のカブスカウトは入団に際し「僕は真面目にしっかりやります…」と約束する。それが中学年のボーイスカウトは「名誉にかけて誓う」のである。それも「神と国とに誠を尽くし…」「身体を強くし心をすこやかに徳をやしなう」などであり、掟の最初が「スカウトは誠実である」である。

およそ12才が十分に理解、イヤほとんど理解できないまま誓いの言葉を述べていた。しかし誓いである。一生の内ただ1回の誓いだ。しかもその誓いが死して後まで続くのである。(恐ろしい組織だと思わないでくださいね。騎士道がベースになっているので…)。

つまり普段の何気ない言動や行動に、深く思いもせずにスカウト精神が影響しているように思える。私の場合、高2から芸能活動をしていてほとんど活動に参加できなかったが、赤い羽根の奉仕活動など営業活動を断り制服を着て渋谷の街角に立ったこともある。小、中、高、大、社会人と幅広い世代が一堂に会し活動を行い、本人が望めば昨日別れたかのようにいつでも帰ることのできる場所。見知らぬ世界中の人々とスカウトであることで兄弟のように集える。スカウト活動はそういうものです。

今、娘と同じ年の若者と共に笑い悩み楽しみ活動をしています。今の時代の若者は今も昔も同じだが、とても忙しがります。何かを指示すると瞬時に「忙しいです」と返ってくる。忙しいことが充実していることと勘違いしていると思う。等しく1日の時間があるのだからうまくやりくりしていくのも愉しいことです。それを「忙しい」の一言で片付けてしまうのはそれこそ自分に誠実でない。だからいつも言います。「忙しい」という前に10秒考えろと…。

(無断転載禁ず)

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