合併はいいですよ
- 増田 明美さん/スポーツジャーナリスト
- 1964年千葉県生まれ。1982年にマラソンで日本最高記録を作り、1984年ロス五輪に出場。引退までに日本最高記録 12回、世界最高記録2回更新。現在スポーツジャーナリストとして活躍中。大阪芸術大学教授、文部科学省中央教育審議会委員、日本陸上競技連盟理事なども務める。今年6月、プーケットでマラソン大会を開催。
平成の大合併時代。全国各地で市町村合併が実施されています。今年2月、合併して約1年になる石川県白山市に伺いました。白山市になって伺うのは初めてですが、1市2町5村が合併する前の白峰村には2度伺ったことがあります。約1億4千万年前の恐竜の化石が発見された白峰村は、温泉があり、黒い板壁の家並みが続く情緒的な風景に心がうっとりとしたものです。
この日小松空港に降りると、白峰村時代の役場の山田さんが市役所の職員として迎えにきてくださいました。車中小1時間の旅。その名の通り真っ白な“白山"(標高2702m)を正面に見ながら「私も昨年2月に合併したんですよ」と話すと、山田さんは「えっ?」と驚き、私は自分の結婚と白山市の誕生が1週間違いであったことを話しました。「でも結婚は嫌になったら別れればいいけれど、市町村合併は1度一緒になると離婚できないんですよ」と山田さん。楽しい車中となりました。
そういえば私の故郷千葉県夷隅郡岬町も昨年12月、3つの町が合併し“いすみ市"になりました。私の祖母は、私が長距離選手で有名になり始めたころ、「記者の皆さんにね、岬町の場所を聞かれたら、アメリカの西海岸に日本で1番近いところって答えたらいいよ」(実際は1番近くないのですが)と自慢げに話しました。そんなことを思い出しながら、故郷の合併のときは岬町がなくなってしまうような寂しさがこみ上げてきたものです。
さて、白山市では“生涯学習のつどい"が開かれ、私は約400人の前で講演をしました。私の講演の前に、子どものバレエや混声合唱が披露され、それが素人とは思えないうまさなのでびっくりしました。聞けば合併前の個々の町で力を入れていた活動を発表し合っているとのこと。この日以外にも雪だるま祭りや文弥人形浄瑠璃など、合併したことでお互いの地域の良き伝統や文化に興味を持つようになり、イベントにはよりたくさんの人が集まるようになったそうです。
市町村合併では、役所が遠くなり不便になるとか、同じような施設が無駄になるとか消極的な声も聞こえていました。“財政的な問題で小さな町や村が消えていく”というような負のイメージもあったのですが、白山市で伝統、文化、スポーツなど、さまざまなものをより多くの人と共有できるという素晴らしい側面を見せてもらえたような気がします。
清々しい気持ちで講演を終え、小松空港へ。するとそこで市役所の山田さんから1人の女性を紹介されました。「私たち、今年5月に合併します」と山田さん。そこで私は2人に伝えました。「合併はいいですよ」
(無断転載禁ず)
連載コーナー
Wendy 定期発送
110万部発行 マンション生活情報フリーペーパー
Wendyは分譲マンションを対象としたフリーペーパー(無料紙)です。
定期発送をお申込みいただくと、1年間、ご自宅のポストに毎月無料でお届けします。
マンション管理セミナー情報
お問い合わせ
月刊ウェンディに関すること、マンション管理に関するお問い合わせはこちらから