連載コーナー
本音のエッセイ

2006年2月掲載

遅ればせながら、韓流に乗って

吉元 由美さん/作家・作詞家

吉元 由美さん/作家・作詞家
東京生まれ。成城大学英文科卒業。1984年6月作詞家としてデビュー。これまでに杏里、山本達彦、中山美穂をはじめ、多くのアーティストの作品を手掛けている。近年は小説家、エッセイストとして活躍中。著書に「しあわせになる恋愛セオリー」(大和書房)他多数がある。最近では平原綾香のデビュー曲「Jupiter」「BLESSING/祝福」の作詞。また「雨よりせつなく」が原作として映画化された。近著は「言葉の向こうにあなたが見える」(アクセス・パブリッシング)を刊行。

韓流ブームはもうピークを過ぎたのだろうか。未だもって『冬のソナタ』を観ていない私に韓流ブームを語る資格はないのだが、これはひとつの時流というよりも日本のエンタテイメント市場に根付きつつあるような感じがしている。韓国はお隣の国、日本人は焼き肉が大好き。同じ東洋人、顔立ちにも違和感はない。それでも以前は距離感を感じていたものが、韓国ドラマのおかげで私たちの生活の中になだれ込むように入ってきたのである。

ぺ・ヨンジュンのファンの友人が語るところによると、韓国人男性は絶対的に日本人男性とは異なるらしい。まず儒教の教えが教育の基本にあるために、目上の人を大切にする。大人になってもお母さんと腕を組んで歩く男性がいる。それはマザコンとか乳離れができていないということではなく、純粋に母親を愛して大切にしているからだという。第一、韓国には「マザコン」という言葉がない。そして徴兵制度があるために、誰もが危機意識を持っていて、国を守るという強い意志はストイックさにつながっていく。頼りがいがあり、女性を守るという意識が高いのだろう。

友人はそう力説してくれたのだが、実はそのことにあまりピンときていなかった。韓流スターを追いかけるおば様方がなんだか滑稽に思えて、ブームになればなるほど距離を置いてしまったのだ。

ところがである。私の思い込みは、板門店で払拭されてしまうのである。先頃初めて韓国へ行ったときのこと。板門店の共同警備区域(JSA)で警備に当たっている韓国人の国連軍兵士の立ち姿を見て、そのりりしさ、美しさに釘付けになってしまった。微動だにせずに立っているその姿は、最初蝋人形かと思ったほど。「きれい」なのである。見た目だけではない。内側からにじみだしてくるもの、訓練によって培われたもの。世界で最も危険な場所を警備しているという使命感がみなぎっているのである。

その印象は、同じような年頃の日本人男性とは違う。髪や肌の色は同じでも、私はそこに決定的な違いを見つけてしまったのである。

ちょっといかがわしいバッグを売る店のお兄さんでさえ優しい。雪がしんしんと降る中、ほろ酔い加減で足下がふらついている友人の手を取って、重い荷物を担いでタクシーを捕まえてくれた。雪の夜には、ソウルでもタクシーはなかなか捕まらないのである。年上だった私たちに優しく親切にしてくれた李君は、韓国人男性の株をぐんと上げてしまった。その好意が、私たちがお客だったからということだけではないことを、すっかり韓国人男性贔屓になってしまった私は願うのである。

(無断転載禁ず)

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