連載コーナー
本音のエッセイ

2006年1月掲載

長続きする昭和30年代ブーム

森永 卓郎さん/経済アナリスト

森永 卓郎さん/経済アナリスト
1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局等を経て、 91年から(株)三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)にて主席研究員、現在は客員研究員。獨協大学特任教授。ニュースのコメンテーターやラジオのパーソナリティーなどと幅広く活躍。著書に『萌え経済学』、『年収300万円時代を生き抜く経済学』など多数。

昭和30年代の風物や生活を描いた映画「ALWAYS三丁目の夕日」が大ヒットしている。実は「昭和」は、日経MJの2003年ヒット商品番付で西の横綱を獲得している。つまり、昭和30年代ブームは、すでに丸3年以上続いていることになる。

どうして、そんなにブームが長く続くのだろうか。昭和30年代ブームは、ノスタルジーに過ぎないという人もいる。しかし、単にダイハツミゼットが懐かしいとか、オロナミンCのホーロー看板が懐かしいというだけだったら、ブームがこんなに長く続くことはないだろう。私は、ブームの原因は、昭和30年代の社会そのものが、今から思い返しても、強い輝きを放っていたからなのだと思う。

昭和30年代は、貧しかった。実質賃金は昭和35年で、今の5分の1に過ぎない。街も着ているものも、今のようにきれいではなかったし、街中にさまざまな臭いが漂っていた。今の若者だったら耐え切れないかもしれない。だが、そんなマイナスを埋めてあり余るくらい、昭和30年代の日本には、心をときめかせる文化があった。私はそれを「曖昧な優しさの文化」と呼んでいる。

構造改革が進む日本は、今急速に欧米型のルール社会に向かっている。あらかじめ決めておいたルールにしたがって、公正な競争を行うというのが、ルール社会の仕組みだ。それは、分かりやすく、平等に見えるのだが、「機会は与えられていた」と言って弱者を切り捨てる口実になるし、「ルールは守っている」と言って横暴を働く者を許すことになる。最近流行の敵対的M&Aなどはその典型だ。

昭和30年代の日本は、ルール社会とは正反対の曖昧な優しさの文化を持った時代だった。味噌や醤油がなくなったら隣の家に借りに行くが、返す必要はない。子どもが悪さをしたら、その場にいる大人が叱る。お年寄りが困っていたら、そこにいる人が手を差し延べる。誰に義務や責任があるというのではなく、コミュニティ全体で、教育も福祉も治安も防災もやっていたのだ。すべてをカネで片付けるのではなく、1人ひとりが社会の一員という自覚を持つ。だから、ルールが無くても、おかしなことは起こらなかったのだ。そうした社会はコストが安い。もしかしたら、昭和30年代は所得が低かったのではなく、そんなにカネを稼がなくてもよい社会だったのかもしれない。その証拠に、当時の方がお父さんが早く家に帰ってきて、家族団欒の時間が今よりずっとあったと思う。

(無断転載禁ず)

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