連載コーナー
本音のエッセイ

2005年3月掲載

一戸建てそれともマンション、どちらを選ぶべきか。それが問題です

北野 大さん/淑徳大学教授・工学博士

北野 大さん/淑徳大学教授・工学博士
昭和17年、東京都生まれ。昭和47年3月、東京都立大学大学院 工学研究科 工業化学専攻博士課程修了。化学物質評価研究機構・企画管理部長を経て現職。経済産業省化学物質審議会委員なども務める。昭和62年、TBS「関口宏のサンデーモーニング」の出演をきっかけに「クイズダービー」(TBS)、「くらしの経済」(NHK)などに出演。現在も数々のテレビ・ラジオ・講演で活躍。タレント、ビートたけし氏(映画監督、北野武氏)の実兄。

“恒産なきものは恒心なし"とかつて孟子が言いました。これは生活の安定なしには精神の安定がないということを示しています。恒産には定まった財産と一定の生業の2つの意味がありますが、日本では前者の意味の定まった財産、より具体的には不動産としての家を意味すると考える人が多いようです。

わが国は土地の価格が高いせいもあり、一般論で言うなら一戸建てよりもマンションの方が値段が安いこと、マンションは都心や駅に近いなど比較的便利な場所に建てられていることが多いことなどから、若いときは職住接近の便利なマンションに、定年後は郊外の一戸建てに住み替え、庭いじりなどを楽しむというのが、これまでの多くの日本人の考え方だったと思います。

ところが最近はこの考え方が変わってきたように見えます。手許にデータがないため定量的な議論はできませんが、私の友人の何人かが、定年後に一戸建てからマンションへ引っ越しをはじめました。何故でしょうか。これには種々の理由があるようです。定年後夫婦2人だけの生活になり、長期の旅行をしたい、映画や観劇にも一緒に行きたいなど、家を留守にする機会も多くなるため防犯上の面から。健康を害したときには大病院が近くにあり安心で、日常の買物も便利。また、年をとると庭の管理もつらくなることなど…。これらの理由には私自身も納得できます。

またまた一般論ですが、一戸建てに比べマンションではスペースが狭くなります。私の友人はマンションへ移るに際し、来客にはお茶とお菓子のみ出し食事は一切提供せず、必要なときは店屋物をとったり、食堂へ一緒に行きます。ましてや宿泊はさせないと方針を決め、マンションには夫婦2人のみの食器、寝具のみ置くこととして、2人が日常的に使用する以外のほかの物は全て処分したとのことです。いつ来るか、いつ使うか解らない人や物のために貴重なスペースを占領されてはたまらないという考え方です。

合理的な考え方ですね。この友人には頭が下がります。というのは私自身、勿体ない、勿体ないと言ってなかなか物を捨てられないでいるものですから。物は使うことによりその中に想い出が貯まっていきます。でも、私たちが物を持つのはその機能を利用するためです。

私自身は現在、都心から約1時間かかる足立区で庭付きの一戸建てに住んでいますが、もう暫くすると定年を迎えます。そして、夫婦2人の生活になります。そのときに都心のマンションに移るべきか否か、これまで長年使ってきた物への想い出の面とそれらの機能面のどちらをより重視すべきかの狭間で逡巡としている昨今です。

(無断転載禁ず)

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